信用金庫支店長「笑いの世界」に飛び込んだ理由 笑いがあれば仕事の業績も健康もアップする

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矢野:プロになりたいという気持ちもなくはなかったのですが、技量以前に私は気が弱いので、「メンタルの面で、プロではやっていけないだろう」と思ったのです。

部活ばかりやっていて成績も悪かったので、父親が勤めていた大阪の信用金庫に入れてもらいたいと思ったのですが、その前に入社試験を受けた他の信用金庫が先に内定をくれたので入庫しました。大阪府八尾市に本店があった八光信用金庫です。今は再編で大阪シティ信用金庫になっています。

だれでも、いろんな面を持っている

楠木:信用金庫に入庫してからすぐお笑いに取り組んだのですか?

矢野:いえいえ。入庫して10年ぐらいしてからです。その頃、当時山本支店長だった中川政雄さんと宴会でご一緒したときに、私が関西大学の落研の部長だったと言ったら、「ちょっとやってみ」と言われて一席やると、腹を抱えてひっくり返って笑われたのです。中川さんがお笑い好きということもあって、「お笑いをクラブ活動としてやろう」と言い出され、信用金庫内にお笑い研究会ができました。

楠木:それは珍しいケースですよね。どういう活動をされたのですか?

矢野:まずは発表の場が必要ということで、八尾市の文化会館を借りて、職員のみんなにお願いしてお客さんを呼んでもらい、入場無料の公演をやりました。

これが、「硬いイメージの信用金庫でお笑いをやっている」と話題になり、ニュースやバラエティ番組に取り上げられました。上司から「おまえらのせいで『お笑い金庫』と言われとるんや」などと言われもしましたが、NHKの『クローズアップ現代』に取り上げられると、みんなびっくりしていました。予算も増額になって、いろいろな活動ができるようになりました。

会社の野球部などでも有望選手をスカウトしますけれども、私たちも一芸入社で落語が得意な人、三味線を弾ける人などに入庫してもらって、お笑い研究会を強化していきました。後にプロになった、桂三金さんも入庫して一緒に活動していました。

楠木:お笑いをやりたいために信用金庫に入る人がいたのですか?

矢野:そういう人もいました。ただ、普段は堅いイメージの職員なのに、お笑いをやってみたら実はすごく才能があって、爆笑を取る人も多かったのです。だれでも、サイコロと同じでいろんな面を持っています。

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