次世代の鉄道車両「主役」は水素かハイブリッドか 当面は「すぐ使える」バイモード車両が先行?

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一方で、バッテリーや低公害ディーゼルエンジンなどと組み合わせたハイブリッド車両については展示がかなり増えた。とくに、電化区間では架線からの電力で走行し、非電化区間ではバッテリーもしくはディーゼルエンジンを動力源とする「バイモード」車両の展示が目立った。

これまで電化区間と非電化区間の直通はディーゼル車両に頼らなければならず、電化区間でもエンジンを回し続けなければならないことが課題となっていたが、電化区間では電車として走行できるバイモード車両は、現状ある設備を使って手っ取り早く環境対策に着手できる方法として、近年は各国で導入が進んでいる。既存のシステムを用いるので水素燃料電池車両と比較して導入・運営コストが安く、地方鉄道でも安心して受け入れることができる。

当面の主力はハイブリッド車か

例えば日立が今回展示した車両「ブルース」は、電気+バッテリー+ディーゼルとすることで、非電化区間でのディーゼルエンジン稼働時間を必要最低限に抑え、地上インフラの改修をほとんど必要とせず、投入後すぐに営業運転できる。搭載するエンジンは最新の環境基準であるEuro6に準拠した低公害仕様となっており、現時点での最適解と言える組み合わせだ。

Hitachi Blues
日立のイタリア鉄道向けバイモード車両「ブルース」(撮影:橋爪智之)

他社製のハイブリッド車両も、組み合わせはさまざまだが、同様に複数の動力源を搭載し、あらゆる線区に対応させた車両が多い。この先しばらくは、こうしたハイブリッド車両が地方ローカル線の主力となる可能性が高い。水素燃料電池車両だけではなく、同型のバッテリー車両も併せて展示したシーメンスは、どちらにも対応可能であることを明確にアピールしたといえる。

もちろん、近い将来に水素の供給が安定し、特に製造過程において環境負荷が少なくエネルギー効率のいい方法が確立され、地上側のインフラが整った暁には、水素燃料電池を動力源とした車両の普及こそが最終目標となるだろうが、現時点では各社とも試行錯誤が続いている状況といえる。2年後、4年後のイノトランスで、その勢力図がどのように変化するのか、しないのかが注目される。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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