首相が速攻で辞任「英国」で何が起きているのか 「レタスよりもたなかった」首相が招いた崩壊

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その後、さらに混乱に拍車がかかった。同国のスエラ・ブレイバーマン内相が、閣僚規範に違反する私用メールをめぐって辞任を表明したが、同氏は公表した辞表において「この政府の方向性を憂慮している」と述べて、トラス氏を批判した。

フラッキングに関する国会決議は「いじめ」や怒声、手荒い扱い、そして涙が飛び交う場面となったと報じられた。より多数の保守党議員がトラス氏の辞任を公然と要求し、さらなる高官の辞任のうわさが絶えなくなり、それに追い付くことも難しいほどだった。

「端的に言えば、完全な、絶対的な、救いがたいカオスだ」とiTVのニュースアナウンサーが述べた。保守党のチャールズ・ウォーカー議員はBBCでのインタビューで不満を隠すことはなかった。

10月20日にトラス氏は、国王に対して辞表を提出したこと、そして1週間以内に新たな党首選挙が開かれる予定であることを明らかにした。

解散総選挙の可能性は低い

これからの展開は?

トラス氏は後任が決まるまで首相職に留まる。辞任を表明した際にトラス氏は、党首選が来週開催される、と述べたが、イギリスの首相が2代続けて選挙を経ずに選任される運びとなる。

全国民が参加し、労働党が政権を取る機会ともなる次回の総選挙は、最も遅い場合では2025年1月まで予定されていない。保守党の新党首がそれより前に開催を呼びかける可能性もあるが、世論調査は保守党が労働党に大敗を喫することを示しているため、すぐにそうする理由はないのが現状だ。

前述のトンジェ教授によると、1つ保守党を利することは時間だ。数年のうちに経済回復が実現すれば論理的には同党は信用を回復できる、と教授は述べる。「党首を変えたからといって保守党が救われるとは私は思わない。だがそれによってダメージを限定させる取り組みはできる」。

(執筆:Daniel Victor記者)

(C)The New York Times 

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