「自動運転車」のカギを握る町工場の正体 GPSがない場所も自動走行できる技術を開発

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事業拡大には当然、人もカネも必要になる。人については、2年以内に従業員を倍にするとして世界中から募集。すでに従業員の半数は外国人だ。資金面では、ソニーなど大手企業から出資を仰ぐ一方、今年中にも株式上場するとみられている。

成長に向けた2つの課題

「日本が先行して法律を変えていくべき」と谷口社長(撮影:尾形文繁)

とはいえ、成長に向けた課題はまだある。一つは法整備だ。現状では、運転手なしの自動車の走行は世界的に禁止されている。谷口社長は「日本が先行して法律を変えていくべき」と政府に働きかけているが、低いハードルではない。

もう一つは人工知能の精度向上だ。人工知能には学習機能があり、テストコースや公道で試験走行を重ねてデータを集積することで、徐々に判断能力が向上していく。たとえばグーグルカーの場合、すでに80万キロメートル以上、一般道での走行を重ねている。

「人工知能の向上には実証実験が必須。公道を走ってデータを集めなければ、実際には使えない」と、人工知能学会で会長を務めていた慶応義塾大学の山口高平教授は指摘する。

加えて、「新車開発には1台辺り数百億円の資金がいる。たとえば(電気自動車を手掛ける)米テスラの場合、トヨタが出資するなど大手企業がバックアップしている」(自動運転技術に詳しい、電気通信大学の新誠一教授)というように、独自開発には限界があるとの見方もある。

ZMPも走行を重ねてデータを集積する考えで、提携先が持つ千葉県成田市のドライブコースを活用している。一方で、「利用される場面を増やし、社会で受け入れてもらえるようにしたい」(谷口社長)とも話す。事業拡大に向けて、この先もアクセルを踏み込んでいけるか。

 「週刊東洋経済」2015年3月14日号<9日発売>「核心リポート02」に加筆)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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