記者が遭遇、JR只見線「再開1番列車」のハプニング 「避難はしごが壊れました」に車内は大爆笑

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11時06分、只見駅は目と鼻の先だ。予定より2時間遅れの到着。「昨日で代行バスとさよならしたはずなのに、また代行バスで只見駅にやって来ました」と車内で声が上がった。

駅前は全線再開を祝うイベントでお祭り騒ぎ。バスは進入できず駅の手前で下車することになった。バスは小出までは行かないとのことで、すべての乗客が只見で下車した。

只見駅の前に着くと、「11時11分に運転再開しました」という告知ポスターが貼られていた。記者たちが乗っていた列車のブレーキ故障は処置が行われ、回送列車で会津若松方面に戻ったそうだ。ただ、この余波で後続列車の運行も大幅に乱れた。

駅前広場で行われているイベントの様子を見ていたら、12時10分頃から駅のホームで地元の子供たちによる鼓笛隊の演奏が始まった。「列車が来ないのになぜ」と思ったら、地元の人が事情を説明してくれた。この鼓笛隊は只見駅に12時10分頃到着する運行再開記念列車を歓迎するために練習を重ねてきたが、肝心な記念列車がやってこない。

遅れて到着する記念列車のために子供たちを長時間待たせておくわけにもいかず、鼓笛隊による歓迎は取りやめに。しかし、「ずいぶん前から練習してきたのだから、せめて演奏だけはしたい」という要望が聞き入れられ、ホームでの演奏が実現した。

記念列車は2時間遅れ

演奏が終わり駅舎から出てきた子供たちは、会場からびっくりするほど盛大な拍手で出迎えられた。ひょっとしたら予定どおり記念列車の到着時に演奏するよりも拍手が大きかったのかもしれない。子供たちはちょっと照れ臭そうだった。

駅前の会場を離れて住宅街をぶらぶら歩いていると、町役場の宣伝カーがスピーカーで「遅れていた記念列車が14時に到着する予定です。よろしくお願いします」とアナウンスしながら走っていた。予定より2時間遅れの到着。でも、只見町の人たちはこの日を11年待ったのだから、あと2時間待つことくらいどうってことない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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