賛否両論の「デジタル給与」押さえておきたい論点 それでも進めたい?見えてくる政府側の思惑

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資金移動業者がデジタル給与に参入するには、これらの要件を満たす必要があり、さらには「最後に口座残高が変動した日から、少なくとも10年間はアカウントが有効であること」等を入れるとなれば、対象となるのは経営規模が大きく継続性のある大手に限られるだろう。実際に名前があがっているのがPayPayや楽天ペイというのは頷ける。

「全額デジタルになると困る」という声もあるようだが、あくまで労働者の希望による選択で、かつ「現金か資金移動業者の口座かの2択は認められないこととする」という方向なので、現実に全額がPayPay残高に入るということはまず考えにくい。住宅ローンや家賃、光熱費等を口座引き落とし等で払っている人が困るということはないだろう。

現金嫌いのスマホ決済ユーザーは歓迎

デジタル給与にしたときのメリットがあるとすれば、給料日にATMに並ばずに済む、決済アプリにチャージする手間がなくなる、履歴が残るので使ったお金の管理がラクで、家計簿アプリとの連携もしやすいなどが考えられる。

昨年4月にFintech協会が発表した、デジタル給与に関する消費者ニーズ調査結果によると、現在の給与受け取りについて不便を感じていると答えた割合は58%で、それは「引き出しのためにATMに並ぶのが面倒」「引き出しや送金に手数料がかかる」「引き出しや送金できる時間が限られている」という理由からだ。

デジタル給与の実現については、4割が「給与受け取りの選択肢が増えるのはよいこと」と回答しており、「現金引き出しの手間がなくなる」「すぐに買い物に使えるのは便利」と感じている人も一定数いた。

スマホ決済アプリは手数料なしで家族や知人に送金できたり、自宅でバーコードを読み取って公共料金を支払えたりと、金融サービスをどんどん拡充している。ヘビーユーザーはデジタル給与を歓迎しているようだ。

もし給与の一部が毎月振り込まれるようになったとして、いちいち銀行で払い出す人は少ないだろう。そもそも、決済アプリとは「支払いに使う」ためのものだ。預金と違って利息も付かないので、そのまま何らかの消費に使われるのが自然だろう。それで買い物すればポイントも貯まる。

不思議なことに、同じお金であっても形を変えると違う物に感じてしまう。お札や硬貨を見ると、これはお金だという意識になるが、スマホ決済アプリの残高はいわばバーチャルなイメージだ。現金化できない残高やポイントをチャージしたものも混じっており、実体がないためだろう。現金だと使うことにためらいを感じでも、スマホ決済なら気楽に使えたりもする。

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