国葬「サイレント・マジョリティー議論」の空虚 賛成か反対か、本当の静かなる多数派は誰なのか

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さらに、「平日の日中に献花をするほどの人々が本当に今までサイレントだったのか」も疑わしいところ。それらがあいまいなままサイレント・マジョリティーを主張するほど、「反対派をねじ伏せるための詭弁だ」と疑われやすくなるだけに、賛成派にとっても得策とは言えないのではないでしょうか。

特に政府関係者や自民党議員が、「行列やデジタル献花はサイレント・マジョリティー」と言い切ってしまうと、むしろ「自分たちに都合の悪いことを隠そうとしているのではないか」などと疑われてしまうリスクがあります。実際、今回の混乱は賛成派の人々や自民党議員らの主張がブーメランのように返ってきたことで起きた感がありました。

実は賛成でも反対でもなく、冷めた目で遠巻きに見ているだけの人々が多く、そんな彼らこそがサイレント・マジョリティーなのかもしれません。

「わからないまま終わった」が多数派か

今回、国葬反対派で最も説得力があったのは、「行列やデジタル献花の人数が少ないのではないか」という声。

平日の日中とはいえ数万人、無料ですぐにできるデジタル献花が約50万人という数は、在任期間歴代1位の安倍元首相にしては多いとは思えないのです。もし安倍元首相の政治的評価が定まったあとに行われていたら、もっともっと多くの人々が献花をしたのではないでしょうか。

「なぜ献花をした人が少ないのか」の理由は、「わからないから」でしょう。今回は、安倍元首相の政治的評価に加えて、旧統一教会との関係性、国葬の定義や決定までの流れ、費用が適正なのかなど不明瞭なことが多すぎました。

判断材料がない状態で「賛成なのか、反対なのかもわからないまま終わってしまった」という人々が多く、「そもそも興味がない」という無関心層も含め、彼らこそがサイレント・マジョリティーに見えるのです。

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