秋のご馳走「白トリュフ」とはいったい何なのか 採取解禁の10月以前に東京で提供される「謎」

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アルバトリュフハンター協会長のマリオ・アプリーレ氏(左)と富松恒臣さん(著者撮影)

見た目ではなかなか違いがわかりにくいトリュフについて、ピエモンテ州在住で、日本人唯一のピエモンテ州公認白トリュフハンターの富松恒臣さんに話を聞いた。富松さんはソムリエの勉強をするため、2001年、ピエモンテ州にやってきた。だがあるとき白トリュフの魅力に取り憑かれ、猛勉強をして公認トリュフハンターの資格を取った。現在は株式会社グレープジュース・プラス代表として、世界へ向けて上質なピエモンテ産白トリュフにこだわってビジネスを続けている。

「イタリア国内でも、州によって収穫していい時期などの規則が若干違いますが、サマートリュフが5月、6月頃から始まります。外側が黒くゴツゴツしているのが特徴で、削った中は寄生する木によって薄茶色や白、グレーなどになります。そして秋トリュフが10月から。この2つは従兄弟のような存在で、一緒に売られ、11月に終了します。値段は白トリュフの5分の1ぐらいでしょうか。それと前後するように、白トリュフのシーズンが始まるのです」と富松さん。ちなみに黒トリュフもシーズンは白トリュフと近い秋・冬だが、ピエモンテ州では一般的に採取されていない。

「白トリュフ」の味わいかたと、そのお値段は?

ピエモンテ地方の冬野菜カルドにチーズソースと白トリュフをかけて(著者撮影)

見た目はじゃがいもにも似た、白くでこぼこした白トリュフは、ピエモンテ州では10月から1月末まで収穫が許可されている。トリュフの中でもとくに人気が高く、生のまま料理に削りかけて香りを楽しむのが身上と言われる。ピエモンテ州でとれる白トリュフは、とくに上質であると世界的に評価されているが、加熱保存には向かないうえに、育成のメカニズムがいまだ完全に解明されていないから人工栽培もできない。野菜などと同じく、土の中から掘り出したら、1週間から10日ほどで香りは失われ萎びていってしまう。だから旬の時期にしか食べられない希少な存在として、シーズンの10月から12月には、本場ピエモンテに世界中からグルメたちが集まるというのは冒頭に書いたとおり。

高価な白トリュフは、客の目の前で削り初めと終わりに重さを測り、金額を計算する店も多い(筆者撮影)

値段もトリュフの中で一番高価で、黒トリュフの3倍ほどだという。毎年、トリュフが出回る頃、トリュフを扱う高級食材店を冷やかして歩くと、走りの時期なら1キロ6000ユーロ(約85万円)なんて値札があったりして、びっくりする。実際に食べるのは、レストランで一皿の料理に白トリュフを薄く削ってもらうとすると一皿分で5〜6グラム程度だが、それで50ユーロ(約7100円)前後の値段が料理代金にプラスされる。

そんな白トリュフを、高級レストランでのトリュフ尽くしのコースから、庶民的なトラットリアで郷土料理と合わせた一皿など、みんながそれぞれに味わって楽しむ。例えば代表的な食べ方は、ピエモンテの名物手打ちパスタ「タヤリン」に削りかけて。卵がたっぷり入った熱々のパスタを溶かしバターで和えたところに、店のオーナーやソムリエなどが恭しく運んできた白トリュフを目の前で削りかける。パスタの熱で白トリュフの香りが立ち上がり、店内いっぱいに充満する。ニンニクにもちょっと似た、華やかな香りにほかのテーブルの客もみんなふりかえり、幸せな気分に酔いしれてぼーっとしていると、どんどん削られてしまうので要注意だ。多くの店がトリュフと一緒に計りをテーブルに持ってきて、削り始めと削り終わりに計量し、値段を計算するからだ。

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