【産業天気図・銀行業】ペイオフ後の地銀以下に注目。大手行は収益拡大競争へ

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2005年1月末現在の全国貸出残高(国内銀行合計)は384兆7551億円(前年同期比3.0%減)と、漸減傾向が続いている。各行の第3四半期の業績概況を見ると、特に地方銀行の一部では、下期に入って貸出ボリュームが底打ちに転じたところもある。ただ、これは大都市圏の限られた地銀の状況であり、地方の資金需要はまだ立ち直ってはいない。
 4月のペイオフ解禁拡大に向け、地銀や信用組合・信用金庫など地域金融機関の再編は加速している。04年10月には山形しあわせ銀行と荘内銀行が経営統合を発表し、続く11月には関東つくば銀行と茨城銀行、紀陽銀行と和歌山銀行も統合を表明した。その結果、全国で地銀が3行以上ある地域は4大都市圏を除けば10県に減る。“支え合う”形での再編は、あと数例だろう。もっとも、1県2行の地域を含め、財務が脆弱な地銀が残っているケースがあり、今後の当局の検査次第では単独で公的資金注入を申請する銀行も出てこよう。
 大手行では、何と言っても2月28日の三井住友フィナンシャルグループの赤字転落発表が衝撃となった。金融庁検査を背景に貸倒費用を大きく積み増したことが主因だ。公的資金注入行が当局に提出した経営健全化計画の利益目標を3割以上下回るため、業務改善命令が下るのは必至。それも引き金となって、噂される大和証券グループ本社や親密信託銀行などとの再編へ突き進む可能性もある。
 4メガバンクの不良債権比率を個別に見ると、紆余曲折もあったが、全体の減少傾向は明らか。大口問題先処理が04年9月期に集中したUFJも、同12月末で6.86%まで低下、3月末の4%割れも視野に入ってきた。これで全大手行が政府に公約した不良債権比率の半減目標を達成できそうだ。
 新年度以降は、公的資金の早期返済を目指して、収益の拡大競争が一層激しさを増してくる。銀行、証券、信託銀行が同じ店舗内に同居するワンストップ型複合店舗で預かり資産の手数料収入を拡大する、あるいは事務コストを大幅に削減したミニ店舗を多数出店して貸出シェアの向上を図る、などの攻めの戦略が続くだろう。総じて言えば、『晴れ時々曇り』の空模様となろう。
【山川清弘記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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