「ポケモン」が救う?危機のロンドンロープウェー スポンサー契約切れピンチ、ただ効果は一時的

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コロナ禍の影響で3年ぶりのリアル開催となったポケモン・ワールド・チャンピオンシップスだが、大会最終日に「来年の開催場所はYOKOHAMA(横浜)」と発表され、「これでついにニッポンに行ける!」と会場は興奮のるつぼに陥った。やはり、”トレーナー”たちは「ポケモンのふるさと、日本へ行きたい」とあって、喜びの声があちこちから上がっていた。

PWCSの日本での開催は史上初となる。ポケモンの愛好者たちにとっての横浜は『ポケットモンスター 赤・緑』の舞台「カントー地方」の港町、「クチバシティ」のモデルと見られている街だ。ゲームの画面に出てくる舞台でリアルな大会が催されるとなれば、チャンピオンでなくても訪れてみたいと思うに違いない。

横浜といえば2021年4月、みなとみらい地区に都市型ロープウェー「YOKOHAMA AIR CABIN(ヨコハマエアキャビン)」が開業。桜木町駅前と、赤レンガ倉庫や横浜ワールドポーターズなどがある運河パーク駅とを結んでいる。こちらもロンドンと同じく小型のゴンドラが多数循環するタイプで、動いている姿はよく似ている。ロンドンでのポケモンロープウェーが大好評だったことを見ると、横浜でもそのにぎわいの再現を期待したくなるところだ。

契約料引き下げでもスポンサーは決まらず

TfLでロンドン・ケーブルカー運営責任者を担うクロンプトン氏は6月にエミレーツ航空との契約終了を公表した際、「新しい”将来のパートナー”は夏以降に発表される予定」と述べた。しかし、現地の情報筋によると、「新たなスポンサー候補に対して契約金を(TfLが本来受け取りたい額の)4分の1相当まで引き下げたが、まだどこも契約締結はできていない」のが現状だという。

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バス路線廃止の検討を迫られるなど厳しい財政難に陥っているTfLにあって、観光需要に大きく依存するこのような乗り物を維持するのは並大抵のことではない。ロープウェーの不調を見越してだったかどうかはさておき、ロンドン全体の行政を司るグレーター・ロンドン・オーソリティー(GLA)は市役所庁舎を2021年末にロープウェー・ローヤルドックス駅の真横に移転させた。

こうした動きははたして運営の維持に奏功するのだろうか。

イギリス政府とTfLは今年8月末、2024年3月31日までの政府支援金注入について合意に達した。これには、20億ポンド(約3231億円)弱の運転資金投入と収益支援メカニズムが含まれるが、まだ本来必要とされる支出額との間にはギャップがある。今後は年金支給額の削減やリストラなど、さらなるコスト圧縮が求められる中、ロープウェーの行方は厳しそうにみえる。コロナ禍後の観光客の戻りがまだ本格的でない中、しばらくは動静を見守るしかなさそうだ。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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