日本人が失った富「デフレ30年」の何とも重い犠牲 GDP世界3位でも"1人当たり"28位に後退の意味

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対外純資産残高……日本の対外純資産は1996年末には103兆3590億円(財務省)だったのに対して、2021年末には411兆1841億円(同)だった。この25年の間に4倍弱になったわけだが、これは企業や個人が海外に資産をシフトさせていたため、と考えていい。言い方を変えれば、海外に資産が流失し続けていた結果が、日本の経済力を弱めていったとも言える。日本企業が国内で利益が期待できる投資先を見つけられずに、海外投資に依存していた30年と言える。日本国内に投資してはじめて、日本経済の成長力が推進される。

企業資産……1998年度の企業の内部留保は131兆円(利益剰余金、法人企業統計年報)。現在は過去最高の484兆円(2020年度、同)に達している。ざっと約3.5倍になっている勘定だが、この背景には日本の財政赤字がある。デフレ経済が続き、政府が莫大な財政赤字を抱えているために、日本の大企業の多くは、社員の給料もあげずに万一日本政府が財政破綻を起こしたときの準備をしているのではないか……、という考え方もある。

本来であれば工場や不動産といった部門に投資するのが企業活動の王道だが、日本の未来に明るいシナリオを描きづらいために、国内投資が進まない。この辺もデフレ経済長期化の影響が大きい。

国家財政……1990年度末の国と地方の長期債務残高は266兆円(財務省、日本の財政関係資料、2021年10月より)だった。そして現在、国と地方の長期債務は1212兆円(2021年度末、同)となっている。GDP比で捉えると、1990年にはわずか59%だったのが2021年度末には219%に達している。

日本銀行の金融政策はこの30年で大きく変わってしまった。1989年7月には6%あった政策金利も、現在ではマイナス0.1%。非伝統的金融政策が延々と続いている。日本銀行の金融政策が、デフレに対して無力であったことの証明といえる。

バブル崩壊後に起きたこと

単純に考えると、バブル崩壊によって土地や株の価格が大きく下落し、個人は預金や現金で資産を保全し、企業は内部留保で蓄え、海外に資産を移していったと言っていいだろう。その一方で、デフレ経済からの脱出を目指した政府は借金をしまくって、財政赤字を歴史的にも例を見ないレベルにまで拡大してしまった……、というのが日本の現実だ。

1990年から30年の間に、日本国民の生活はどうなったのだろうか。大震災や台風といった自然災害に見舞われ、リーマンショックなど海外発の経済危機にも対応を迫られた。とはいえ、おおむね日本の国民生活は先進国レベルの中でも、そう悲観的なレベルではない30年だったのかもしれない。

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