脳のシワが多い人ほど「頭が良い」が誤解のワケ 脳研究者はいったいどうやって研究するのか

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さて、哺乳類に話を限定して、脳を比較して見てみましょう。哺乳類とは、人間と同様、 お母さんのお腹(子宮)の中で育ち、生後はお乳を飲んで成長するタイプの生物です。

哺乳類の脳を見比べてみると、これが同じ脳なのかと驚きます。図1は、いろいろな哺乳類の脳を上から見たものです。一見して、どれも脳だとわかる程度には類似していますが、よく見ると違いがあることがおわかりいただけるでしょうか。

図1 いろいろな哺乳類の脳(出所)Florian Maderspacher, Sizing up the soul’s seat, Curr Biol. 26(20), 2016

https://doi.org/10.1016/j.cub.2016.09.066

基本的には、どの脳の大脳皮質にも右脳と左脳があり、その下に小脳、そして脊髄につながる脳幹が見えています。ヒトの場合は、大脳皮質が非常に発達しているため、小脳は隠れて見えませんが、基本的な構造は一緒です。

一方、マウスやラットなどの大脳皮質にはシワがないことに気づいたでしょうか。巷ではこの脳のシワが多いほど「頭が良い」と言われていますが、それは誤解です。このシワは、大脳皮質の表面積と頭蓋骨の大きさによって決まりますが、ヒトの場合は大脳皮質を広げた際の表面積は、新聞紙一枚程度と言われています。それを頭蓋骨の中に入れるためにはシワができてしまいます。

霊長類の中でも、コモンマーモセットではシワがないことが有名ですし、イタチの仲間のフェレットの脳にはシワがあることが知られています。シワの有無と賢さにはあまり関係がないと考えて良いと思います。

機能獲得と機能欠損

動物実験では、ある実験操作をした際の動物の行動の変化や、組織の構造や細胞の形態やはたらきの変化からその実験操作の意義を類推するという方法がとられます。これにより、その実験操作と観測される変化の間の関係を知ることができるのです。

多くの場合、我々が知ることができるのは「相関関係」です。つまり〝関係がある〟ということだけがわかります。さらに一歩進んで「因果関係」を知ることは多くの場合難しいですが、目標としては因果関係を証明したいという気持ちがあります。

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