脳のシワが多い人ほど「頭が良い」が誤解のワケ 脳研究者はいったいどうやって研究するのか

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一方、体に張り巡らされている神経は、末梢神経系と呼ばれています。このうち、五感からの情報を脳に伝える神経を感覚神経系、筋肉を動かす神経を運動神経系と呼びます。さらに、臓器や筋肉と連絡し、意識することなく体のいろいろな機能を調節している神経は、自律神経系と呼ばれており、活発に働く時に優位になる交感神経系と、リラックスしているときに優位になる副交感神経系からなります。

私たちは、普通、自分の体のことは自分ですべてコントロールできる、自分の意思ですべてを決定していると思っているかもしれません。しかし、逆に私たちの体の働きのほとんどは無意識のうちに起こっているもので、意識してやっていることはほとんどないと言われています。もちろん、脳が重要な働きをしているのは間違いないのですが、自分の脳のことですらも、意識に上る部分はほんの氷山の一角に過ぎないと考えられています。

脳の解剖で動物を使う利点

この「意識ある脳」が脳の働きのほんの一部であるために、脳を研究することは非常に難しいものとなります。人間の脳の活動を直接測定する技術はほとんど存在しないからです。まして、言葉を話さない動物の脳を研究するのは、非常に骨が折れます。

一方で、動物の脳を研究する際の利点としては、ある処置をしたのちに生じる脳の変化を、顕微鏡のレベルで即座に観察できる点にあります。

実験をする上では、なるべく条件を簡略化し、その因果関係を調べる必要があります。ヒトの脳も、死後検体として提供され研究に用いられることもありますが、生活習慣や罹患病歴が異なり、もしかするとさまざまな疾患に複合的に罹患していたかもしれません。遺伝子が関連する病気ですと、親や子を含む家族の病歴まで考慮に入れて調査するのは非常な労力となります。

その点、実験用に飼育されているいわゆる実験動物は、どのような遺伝子を持った親から生まれてきたかがしっかりと管理されており、栄養や睡眠、あらゆる生活習慣が、個体間で均質になっていることが保証されています。したがって、ある実験操作をした直後に、脳を取り出して調べれば、そのときに観測された変化は、その実験操作の影響のみによると仮定できます。

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