助けあえない日本人女性、「分断」が進んだ背景 他国に比べて女性間の連帯が弱いのはなぜか

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分断の要因として菊地准教授が注目するのは、1)1985年に成立した男女雇用機会均等法、2)1999年に公布・施行された男女共同参画社会基本法、3)アベノミクスで生まれた2016年施行の女性活躍推進法の3つだ。

1980年代に女性たちが求めたのは「雇用平等法」だったが、「均等」法は差別規制が努力義務にとどまる残念な内容だった。しかも、この法律がきっかけで、総合職と一般職という女性同士の待遇格差が生まれた。

さらに、1985年に専業主婦を優遇する第3号被保険者制度ができ、翌年に労働者派遣法が施行されたことで、女性たちは男性並みに働かされる総合職、補助的な業務に終始する一般職、非正規雇用の派遣労働者、そして主婦に分断されてしまった。

男女共同参画社会基本法については、女性たちは『性差別禁止法』を求めたが、男女が共に社会に参加する、という中途半端な法律に。「女性活躍推進法に至っては、なぜ女性だけが推進されなければならないのか、という根本からずれた内容で、女性は家事・介護・育児に加えて、男性と同等かそれ以上に働き、国や企業に利益をもたらさなければならない、という内容になっています」(菊地准教授)。

ネオリベラリズムがさらに分断を加速

いずれの法律も、差別を積極的に解消する内容にはなっていない。負担ばかりが大きくなって女性が分断されているのは、ここ40年ほどで広がったネオリベラリズム(新自由主義)が影響している。

「そもそも女性差別は、いろいろな立場に分類や区別をすることで、お互いに争わせようと意図して行われるものです」と菊地准教授。イギリスでネオリベラリズムを先導したサッチャー首相が、国にあるのは国家と企業と家庭で社会はない、と発言したことを引用し、「ネオリベラリズムは、人を連帯させないで資本の奴隷にさせる特徴がもともとある」と指摘する。

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