「配布会が救い」月8万で生活する母子世帯の現実 「助かるのは紙オムツ。買うと千円はします」

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同フードバンクが立ち上がったのは2020年12月。コロナ禍で生活困窮者が増えていると聞いた区内在住の有志の女性8人が立ち上げた。配布会はこの日で11回目。毎回約130人分を用意するが、予約枠はすぐ埋まる。利用者の55%が50歳未満で、7割が女性だ。実行委員会事務局長の鳴海加代子さんは、こう話す。

「社会保障制度の不備など、本来は政治の貧困です。しかし、困ったときはお互いさま。私たちにできることをやっていきたい」

貧困家庭の子どもの学習支援をする認定NPO法人「キッズドア」は昨年、「わたしみらいプロジェクト」という親の就労支援をスタートさせた。理事長の渡辺由美子さんは言う。

「生活が苦しいのは、働いているのに十分な賃金を得られないからです。その状態から抜け出すにはより高い賃金を得られる職場で働くことですが、国の就労支援は学校に通うにしても本人の負担額が多く、時間的な制約もあるなど支援が届いていません」

(AERA2022年8月29日号より)

自己責任で切り捨てれば、社会にとっても大きな損失

同プロジェクトは無料。就労支援のプロたちが3カ月にわたり、自分の強みの把握から始め、履歴書などの書き方、面接のコツ、メイク術などをオンラインで教える。昨年は全7回開催し、延べ311人が受講。給料が上がったり、パートから正社員に採用されたりした人たちも出た。

「自分でその道を選んだんだろうと、貧困を『自己責任』で切り捨てれば、社会にとっても大きな損失です。稼げるようになれば家計の安定につながり、個人消費にも貢献し、社会保障の担い手にもなり経済全体にとってプラスになります」(渡辺さん)

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