この秋、日本の食卓を襲う「食料インフレ」の猛威 「からあげクン」36年で初値上げさせた根本原因

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だが今回ばかりは様相が異なる。2月下旬には製造部門から「もう限界」と悲鳴が上がり、その後何度コスト計算を繰り返しても、値上げは不可避となった。

ファミリーマートの「ファミチキ」も8月23日から1割の値上げを実施した。同社は3月に価格戦略の専門チームを立ち上げ、物価高騰に向き合う。「ファミチキの値上げは年明けからの課題だった。消費者に、いかに価格分の価値を感じてもらい、買ってもらうかが焦点になっていた」と商品業務部の阿部大地氏は言う。

さまざまなコスト増が値上げ要因となったからあげクンやファミチキだが、決定打となったのが今年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻だ。

小麦やトウモロコシ、大豆など穀物の価格は南米、北米など主要産地の不作で2020年末から2021年にかけてすでに上昇していた。そこへ、世界有数の穀物輸出国であるウクライナとロシアとの戦争が起きたことで、春作物の作付け減少や港湾封鎖による輸出制限への懸念が高まった。

過去最高値を更新

穀物、肉類、植物油などの価格が急騰したほか、原油高によりサトウキビがバイオ燃料に振り向けられるとの思惑が働き、砂糖価格も上昇。国際的な価格指標である「FAO食料価格指数」は、2020年には100前後だったが、今年3月には159.3と過去最高値を更新した(2014~2016年の平均価格を100とする)。

国内で使われる政府売り渡しの輸入小麦は、「今年4月の価格改定時にはウクライナ危機の影響をまだほぼ受けていなかったものの、強烈な先高観が生じた」(食品業界関係者)。春から夏にかけて食品・外食全般で値上げが急増した。

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