気象災害から鉄道を守る「手だて」はあるのか 東北を襲った豪雨、九州の例から学べる?

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2020年7月に発生した熊本県南豪雨では、熊本県を走るくま川鉄道(人吉温泉―湯前間)が保有するすべての車両(5両)が浸水し、球磨川第四橋梁が流失するなど壊滅的な被害をもたらした。現在、肥後西村―湯前間で部分運行を行っているが、流失した球磨川第四橋梁の架け替え工事のめどが立ち、2025年度中に全通されると報道されている。

くま川鉄道には「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金」による支援が適用され、上下分離方式で全通する予定だ。この上下分離方式は、地方自治体などが鉄道施設、鉄道用地等を保有し、鉄道事業者に無償貸与する方式である。補助率は国が2分の1、地方が2分の1である。地方の負担については元利償還金の95%に対して普通交付税措置がある。

くま川鉄道では肥後西村―湯前間は鉄道、人吉温泉―肥後西村間で代替バスによる運行が行われている。くま川鉄道に聞いたところ、「利便性の高い鉄道での復旧について、地域にとって、本当にしっかり議論しないといけない」と話してくれた。さらに全通の予定について「補助金のための上下分離。国が97.5%を負担してくれるので、上下分離しか方法がない。そうでなければ、地域としては難しい」と、復旧できなければ廃止しか選択肢はない中での、生き残る方法だったと話してくれた。

万全な災害対策の推進は難しい

毎年のように、異常気象によって災害が発生し、列島の鉄道網を破壊していくと、このままでは全国各地の至る所で鉄道が遮断され、地方の人口減少や、過疎化をさらに加速をさせてしまいかねない。

鉄道会社の地震や水害を含めた備えなど、わが国の鉄道と災害に対する考え方の中には、世界的に見れば先進国といえるものもある。ただし、その多くは都市部の鉄道や新幹線がメインで、地方鉄道などの赤字ローカル線においては経費もかかる上に地元自治体の協力も必要なことから、万全な災害対策を推進していくのは難しい状況にある。

地域にとって鉄道は、経済効果が非常に大きいが、何度も被害が出てしまえば話は変わる。復旧を何度も繰り返していると、支えている地域にとっても、大きな損失となってしまう。地方の鉄道網がこれ以上なくなってしまわないように防災は必要だが、資金面が厳しい地方ローカル線にとっては、その特徴を活かした対策が必要なのではないかと思う。

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