ユニ・チャーム、好業績の背後に2つの不安 足元2ケタ成長でも中国でシェア低下

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 一方、インドネシアは紙おむつだけでなく、生理用品も好調だ。ユニ・チャームは2014年3月期にインドネシア第2の都市と言われるジャワ島東部のスラバヤで、同国3カ所目の工場を稼働させた。現地競合との商品供給力の差は歴然で、実際インドネシアにおけるユニ・チャームの商品シェアは、前期で紙おむつ66%、生理用品38%に及ぶ。紙おむつは子ども用、大人用ともにトップシェアを誇る。

順風満帆に見えるが、危うい兆しもいくつかある。

一つは中国市場における、紙おむつのシェア低下だ。ニールセンの店頭調査によると、14年3月までユニ・チャームは米P&Gの「パンパース」に次ぐ2位を確保していたが、その後米キンバリー・クラークの「ハギ―ズ」に抜かれ、同年末には花王の「メリーズ」にも僅差で抜かれた。これは14年12月期前半にプレミアムラインの投入が遅れ、それより価格が安いスタンダードラインの在庫がだぶついたことが背景にある。すでに在庫回収は一巡し、プレミアムラインの投入で弾みは付いているが、競合他社も急速に成長しており追いつくのは容易ではない。

中国事業が抱える2つの不安

もう一つは同じく中国市場におけるネット対応の遅れだ。中国の紙おむつ市場を販売チャネル別に見ると、2011年に14%だったネット通販経由の比率が14年には32%まで上昇。ベビー専門店やスーパーなどの実店舗経由を抑え、最大の販売チャネルとなった(ユニ・チャーム調べ)。iResearchによると、2016年に中国のネット通販市場は4兆7720億元 (90兆6680億円)に膨らむ見通しと、今後もネットは中国で事業を続けるうえで最重要チャネルといえる。

そのネット通販において、日用品メーカーの重要な「店舗」となるのが、アリババグループ傘下の「淘宝網(タオバオ)」や「天猫(Tモール)」、JDが手掛ける「京東(JDドットコム)」などの大手ショッピングモールサイトだ。もはやこれらサイトへの手厚い出品や販売、販売促進なくして中国では戦っていけないが、ユニ・チャームのネット販売比率は依然、市場平均値を下回る。

高原豪久社長は今期中国事業で「(円ベースで)30%成長を目指す」と語っている。失ったシェアを奪い返すには、めまぐるしく変わる中国人消費者の嗜好をとらえると同時に、ネット対応の加速が必須。さらなる成長を目指すには、目先の好況に浮かれず、課題をひとつずつクリアしていかなければならない。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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