ソフトバンク孫正義社長「大反省会」の一部始終 ビジョンファンドで大赤字計上、止まらぬ逆風

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2号ファンドは昨年、猛烈な勢いで世界中のベンチャー企業にお金をばらまいた。アメリカの投資調査会社ピッチブックによれば、ピーク時には2日に1社という異例のペースで投資を決めた。

「有頂天になっていた」。決算会見の場で、孫氏はそう口にした。「1号ファンドでは1社に1兆円近いような投資をし、大振りで三振というものがたくさんあった。これを反省し2号ファンドではしっかり組織を作り、1社あたりの投資額も小さめにして、行けると信じていた。だが打席で振りまくったら大きな評価損を出した。市場環境や戦争、コロナの影響はあくまで言い訳。もう少し厳選して投資していればこれほどの痛手を負わなかった」。

さらに、「2021年は市場全体でユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場企業)の評価額が高くなりすぎていた。コロナ禍でオンライン関連の銘柄は株価が上がったが、ユニコーンの高いマルチプル(株価倍率)も正当化されてしまった。今振り返ってみれば、バブル状態だったと反省している。すべて指揮官である私の責任だ」と孫氏は弁明した。

投資先は急減、運営コスト削減へ

そうした反省もあり、直近では投資の数を急速に減らしている。SBGの開示資料によれば、2021年7~9月期の66社をピークに、直近2022年4~6月期は13社まで減少。投資の承認金額では2021年4~6月期の206億ドルをピークに、この4~6月期は6億ドルまで縮小している。

今回孫氏が明らかにしたのが、ビジョンファンドの運営コストを大幅に削減する方針だ。「投資の財源を絞っているため、投資先の“ハンター”やバックオフィスが多すぎる状態であり、人員削減をせざるを得ない。全社的に聖域のないコストダウンを図る」(孫氏)としつつ、規模については明言しなかった。

昨年以降、ビジョンファンドからは幹部の離職が相次いでいる。昨年には副社長兼最高戦略責任者を務めた佐護勝紀氏、今年に入っては最高執行責任者を務めていたマルセロ・クラウレ氏が退社。直近では長年ビジョンファンドを統括してきたラジーブ・ミスラ氏が主要な職務の大部分を退くと報道された。ほかにもパートナーレベルの人材の退社が続いている。

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