米名門校が「子どもにランク付はしない」納得理由 天才が出続ける学校が考える自信の持たせ方

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そして、子どもには人から信頼される行動をとらせることも大事です。うそをついたり、ごまかしたりするようでは信頼されるはずがないし、自分に自信を持てなくなります。たとえそれが台所の床の掃除でも、皿洗いでも、数学の宿題でも、自分の能力を最大限に発揮するようにするのです。完璧である必要はなく、挑戦する態度が重要なのです。

実際、日本人はこの点に優れていると思います。学校の教室の掃除でも、タクシーの運転手さんも車内を綺麗にして、手袋をして運転をして、安全にも気を配っている。日本ではどんな分野でも非常に熱心に取り組んでいる人がいる。こうした文化は自分を持つための重要な要素だと思います。

子どもの「ランク付けをしない」意味

――今の子どもたちは昔より大変な世界に生きている気がします。

そう思います。正直なところ、最近の学生にとってより困難な問題の1つは、サイバーワールド全体だと思います。テクノロジーとサイバーの世界には多くの利点があり、指先だけで多くのことを調べることができますし、暗記をする必要もありません。そうした中で、今重要なのは事実を暗記することよりも、批判的思考や学習方法を学ぶことになっています。

ただ、ネットやSNSによって生徒たちはサイバーの世界においても社会的な存在感を示さなければならなくなってしまった。「人気」を得ることは実社会でも、SNSの世界でも大変なことで、人気を得ようという努力は時として有害なものになりかねません。もっと生産的なことに使われるべき時間やエネルギーがSNSによって奪われている気がしているのです。SNSの圧力は学生でいることをより難しくしているのではないでしょうか。

ちなみに、ハーカーでは生徒たちの「ランク付け」をしていません。もちろん成績はありますが、「あなたはクラスで1番です」といったランクはない。それは先ほども話したように、それぞれ履修科目が異なるからです。

ランク付けによる競争のストレスから解放されるため、生徒たちは互いに協力し合い、自分が学んだことを共有しあう傾向があります。例えば、ある学生が他の生徒のところに行き「あなたは金融の専門家だよね。この問題は財務的にどんな問題があるのかな」といった具合にほかの学生に助言を求め合うのです。

これは会社に似ていますね。経営に長けた人、財務に長けた人、技術に長けた人、と起業するにはさまざまな能力を持った人が必要です。生徒たちは学生時代からこうしたチームワークを学んでいるわけです。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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