金融庁の厳罰が示す「リート」成長の曲がり角 不動産鑑定評価額が実勢価格に追いつかない

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金融庁がREIT運用会社に対して行政処分を下すのは14年ぶりとなる(撮影:尾形文繁)

金融庁は7月15日、REIT(不動産投資信託)運用会社のエスコンアセットマネジメント(以下、エスコンAM)に対して、3ヵ月間の業務停止命令を下した。

親会社の“言い値”でREITに物件を買わせようと、不動産鑑定会社に評価額の引き上げを働きかけたことが投資家の利益に反すると判断した。エスコンAMは中堅デベロッパーである日本エスコンの子会社。2018年に設立されたエスコンジャパンリート投資法人を運用しており、REITの中では比較的新顔だ。

処分についてREIT関係者は、「親会社との取引には特に神経質になる。いくら新興系とはいえ、利益相反のルールを知らなかったとは思えない」と呆れる。14年ぶりとなるREIT運用会社への行政処分は、投資家と親会社のはざまでもがくREITの姿を象徴する。

鑑定業者に親会社の売却希望価格を提示

金融庁が問題視したのは、親会社である日本エスコンがREITに対して売却した3つの物件だ。いずれの物件かは非公開だが、REITが上場した2019年から2021年の間に行われた取引と見られる。

エスコンAMは取得に先立ち、複数の不動産鑑定会社に物件価格の評価を依頼した。ところが、鑑定会社がはじき出した数字のうち3物件の評価が、親会社の希望する売却価格よりも低かった。

そこでエスコンAMは、鑑定会社に親会社の売却希望価格を提示し、これを上回る評価額を提示するように働きかけ、それに応じた1社の数字を採用した。加えて鑑定報酬の減額も交渉し、鑑定会社の採用理由を「評価額の高さ」ではなく「報酬の安さ」と説明していた。

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