SUMCO、ウェハーは「3400億円投資」でも足りない 顧客の在庫は払底、作れば売れる状況が続く

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橋本眞幸(はしもと・まゆき)/SUMCO会長兼CEO。1951年東京都生まれ。76年東京工業大学大学院修了後、三菱金属(現三菱マテリアル)に入社。2011年三菱マテリアル副社長。12年、出資先だったSUMCOの社長に就任。16年から現職。(撮影:今井康一)
スマートフォン、PC、家電、自動車。身の回りのあらゆる機器に欠かせない半導体。その土台となる材料のシリコンウェハーで、世界2強の一角を占めるのがSUMCOだ。半導体不足でフル生産が続き、3400億円の大型投資を決断した。過剰投資で赤字に沈んだ過去もあるが、この局面をどうみるか。橋本眞幸会長兼CEOに聞いた。

──シリコンウェハーの需要は強そうですね。

よすぎて困っている。

顧客のウェハー在庫は払底しており、入荷するやいなや消費する「入れ食い」状態だ。先日もある海外顧客からのメールに「もっとウェハーを供給してくれないと困る。hand to mouth(その日暮らし)だ」と書かれていた。営業部宛てのメールだったが、CCに私のアドレスを入れて直訴してきた。

当社としては顧客の要求する量を供給できず、慚愧(ざんき)に堪えない。既存設備はすでにいっぱいで、AI(人工知能)を活用して生産性向上を図っている。約束した量より少しでも多く生産できると、すぐに買っていかれる。

ウェハーがないと半導体は造れない。当社のせいで半導体市場の成長が抑えられてしまうのではないかと危惧するほどだ。30年近くシリコンウェハーに関わる仕事をしてきたが、これほど足りない状況は初めてだ。

コロナ禍で電子デバイスの需要が急増

──なぜこれほど需要が強いのでしょうか。

コロナ禍の影響が大きい。テレワークなどによって、対面でのコミュニケーションが電子デバイスを介したやり取りに置き換わった。容量の大きい画像データを中心に、データ通信量が急拡大した。EV(電気自動車)シフトも早まっている。そのため、顧客の半導体メーカーもどんどん新工場を建てている。予想より2、3年前倒しで需要が膨らんだ。

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