米国の最大懸念はガソリン高騰。慎重外交が中東の米国離れ助長も《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》

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民主化に賛同しつつ、体制の選択には関与しないオバマ政権

外交政策の観点では、今までのところはオバマ政権の慎重姿勢が目立つ。総論では民主化に賛同しつつも体制の選択にはできるだけ関与しない政権の方針は、結果的にはエジプトでは成功したようにみえる。

一方で、地域の親米政府には米国が影響力の行使に後ろ向きになっていると映っても不思議ではなく、中長期的には米国離れの流れを招く可能性が指摘できる。

不透明度が高いリビアを除けば、「米国にインパクトを与えるような大きな騒乱の伝播はみられない」というのが現時点での大方の見方ではあるものの、むしろサウジアラビアやイランの出方など、中長期的な影響が気になるところ。

また、民主化に動いた国も、世論の不満の根底にある経済的な問題が簡単に解決するわけもなく、民主主義に対する経験値の低さもあいまって、これからの情勢が安定的に推移する保証はない。オバマ政権が選択を迫られる局面は、まだこれからも発生しうる。

リビア情勢については、オバマ政権はじりじりと関与を強める方向に動いている。ただ、議会には関与強化に懐疑的な声が根強いのも事実。昨秋の中間選挙で下院多数党の交代を経験したワシントンは、いままさに予算審議を中心とした国内の政争がヤマ場を迎えており、外交政策を巡る議論に集中する余裕がない。巨視的にみれば、国際舞台での米国の存在感低下を感じさせる現象といえよう。
(中村 稔 =東洋経済オンライン)

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