コロナ禍で行き詰まった人を再起「座間市」の凄み 困窮者支援で注目「ゆるくつながる」伴走型支援

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実は、林の机には小さなホワイトボードがあり、その裏側にはガムテープで小さなメモが貼られている。

「命のこと以外は慌てる必要はない」

メモには、そう書かれている。生活援護課では日々、さまざまなことが起きる。その中には、課長として林が意思決定を求められる案件も多い。だが、そのときも、一呼吸置いて熟慮する。その戒めのために貼っているという。

「何かあると慌てるタイプなんですよ」

そう言って林は恥ずかしそうに頭をかいているが、一方で利用者の命に関わることには即座に対応する。それが林と生活援護課の流儀である。

そして、市役所全体に始業のチャイムが鳴り響くと、慌ただしい1日が動き出す。

ケースワーカーの目まぐるしい1日

3人の係長を含め27人のケースワーカーが在籍する生活援護係では、始業のベルが鳴ると、それぞれのケースワーカーが生活保護利用者の情報が記録されているケースファイルを開き、相談内容をパソコンに打ち込んだり、窓口に来た生活保護利用者の相談に乗ったりと、それぞれの仕事を始める。

ケースワーカーの主な仕事は、生活保護費の支給業務と生活保護を希望する人との面談、生活保護利用者の現況確認である。

生活に困窮している人々が健康で文化的な最低限度の生活を送るために生活保護制度が存在しているということを考えれば、生活保護費の計算と支給はケースワーカーの仕事の一丁目一番地だ。希望者との面談も同じく重要で、電話での問い合わせであれば話を聞き、面談の段取りをつける。実際に面談に来た人に対しては、その人の状況を詳しく聞き、生活保護の受給条件に合致するかどうかを検討する。

現況確認も、利用者が必要な扶助を得られているかどうかをチェックするために不可欠なものだ。実際の生活状況を確認する必要があるため、利用者の自宅や居住している施設などを訪問し、本人や施設の担当者に利用者の日々の生活や仕事、健康状態などを聞き取ることもある。そこで、健康状態の悪化などがわかった場合は病院での受診を調整したり、介護サービスを入れたりと、関係機関と連携してその人に必要な支援を提供していく。

座間市の生活保護利用者は2021年11月時点の速報値で2353人と全人口の17.88パーミルに上る。最近は単身高齢者が増えており、病院や介護施設との連携は以前にもまして重要になっている。座間市の場合、ケースワーカー1人が担当しているのは80世帯ほどで、この数が増えるようであれば、ケースワーカーを増やす。

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