闘病3年、享年38歳の彼女が完治信じて紡いだ言葉 末期がんにより35歳で余命1年宣告、夫が記録守る

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完治を信じる自分を信じるというみづきさんの信念の強さは、余命1年と宣告された1年後に生存を喜ぶ日記をいっさい残していないことからもうかがえる。身長173cmのみづきさんの体重は闘病生活が始まってしばらくしてからずっと48kgを切っている。身体の内部からも危険信号が止まらない。それでも完全復活には最低3年は必要だと予測し、現状に納得しながらひたすら痛みに耐える。冒頭に引用した日記はそんな時期につづったものだ。

しかし、病状は一向に回復していかない。

腸閉塞と肝臓への転移、腎ろう造設

2007年10月15日、自宅療養していたみづきさんは腸閉塞を起こして緊急入院する。心身ともにブログが書ける状況になく、数回にわたってKさんの代筆が残されている。

<26日朝はみづきの号泣から始まりました。
朝の回診時に担当医から、腸閉塞の改善は今後も無い可能性があり、その場合は、もう永久的に腸の運動を止める処置をし、口からの食事をせずIVH(中心静脈からの高カロリー投与)の点滴で命を繋ぐ事になるとの話を受けたからです。
みづきと私は結婚してもう8年近くなります。アメリカ在住時にみづきが癌宣告されるまで泣き顔を見たことはありませんでしたが、それ以降は、どうしても泣くことが多くなりました。癌という病気はとても残酷な病です。>
(2007年10月28日「かなり厳しい現実」)

何とか腸閉塞から脱したものの、状況の悪化は止まらない。余命半年の宣告があると生前から受け取れる死亡保険に加入していたため、年末にそれとなく主治医に余命を尋ねてみた。

<「先生はやっぱり余命6ヶ月ぐらいと思ってますよね・・・?」って。そしたら「腸閉塞も起こしているし、まあそうですね・・・」と言われました。それを聞いて、半分は「やった!これでリビングニースを請求できる!」と思いましたが、もう半分は「やっぱりそうか・・・」とがっくりする気持ちがありました。しかも先生は6ヶ月どころか実際はもっと短いとさえ思っている様子でした。>
(2007年12月28日「余命6ヶ月の宣告で複雑な心境です・・・」)

年が明けた2月には、肺だけでなく肝臓への転移が疑われ、大きくなった原発巣が腎臓にダメージを与えていることも判明した。一刻も早く尿をスムーズに排出するために尿管にステント(金属のチューブ)を入れ、背中に穴を開けて腎ろうを造設することも検討しなければならないという。しかし、不可逆的な処置はどうにか避けたいという思いが首を縦に振らせない。

<今回の話し合いの中で双方の決定的な違いをお互いに確認しあったのですが、やはり「今より改善することは絶対にない」と先生方が考えているのに対し、「可能性は低いけど改善の余地はある」と私は考えているのでこれらの見解の違いが出てきている、つまりステントを入れるタイミングに差が出てきているのですね。>
(2008年3月5日「水腎症の恐怖・・・再び!!」)
次ページ最終的にはステントと腎ろうを受け入れた
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