松本明子さんの実家じまい「私のしくじり体験談」 50代で年に7回、四国に片づけに行く壮絶

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25年維持し続けた松本さんのご実家の台所

──松本さんは香川県が運営する「空き家バンク」に実家を登録したのち、3カ月で希望額で買ってくれる買い手がついたわけですが、決まるまでにもかなりのご苦労が。

地元の不動産屋さんによる実家の査定では、「上物は築年数が古いのでゼロ、土地が200万円。更地にすれば買い手がつきやすいが、家の解体費用は500万円ほどかかる」と厳しいものでした。そこで親戚にも聞きましたが引き取り手がなく、わらにもすがる思いで登録したのが「空き家バンク」でした。賃貸と売却の両方で登録しましたが、当初はこちらの希望額とは遠いリクエストばかりが届いて落ち込みましたね。

累計で600万円かかったリフォーム代だけは回収できる金額でなんとか、と待ったところ、その金額で買ってくださる方が見つかったのは、本当に幸運でうれしかったですね。

体力的にも大変な時期の実家じまい

──実家を売ると決めた後の、実家の室内の片づけも大変だったとか。

羽田空港から高松空港までの飛行機代が、往復約6万円。夫婦で高級レストランのディナーを楽しめる金額ですよね(笑)。家財や遺品整理に3回ほど飛行機で行ったので、合計約18万円かかりました。その費用を節約するためと、自宅に荷物を持って帰るために車で行くこともありましたが、到着までに早くて片道およそ10時間。往復20時間。1年間で7回行ったので、24万5000円ほどかかりました。体力勝負でしたね。

(図:『実家じまい終わらせました! ~大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』より)

──日本人女性が閉経する平均年齢は50歳頃で、前後10年間、45歳から55歳を更年期世代と呼んだりします。松本さんが実家じまいをしたのは51歳なので、体力的に大変だったのでは。

おっしゃるとおりで、更年期真っただ中でした。40代後半から50代は女性のホルモンバランスが崩れる時期らしいですが、私も例にもれず心身ともにつらかったです。

その頃は、子どもがいる人であればちょうど受験の時期などとも重なるわけです。高齢の親が心配になったとき、子ども世代は40代から50代です。最近は男性更年期障害もニュースで取り上げられるようになりましたが、男女ともにヘビーなタイミングで迎えるんですよね、実家じまいは……。

室内の片づけの話に戻ると、最終的に私は東京から高松まで通う体力を消耗したくないのと節約したい一心で1週間、実家近くの健康ランドに寝泊まりしていました。実家はプロパンガスを止めていたのでお風呂に入れませんし、布団はすでに処分していたので、寝泊まりできなかったからです。

そして、朝8時から夜11時までおよそ15時間、毎日実家の断捨離。いま56歳なのでまだ5年前ですが、いまやれと言われても体力的に無理だと思います。

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