「うちの子は才能がない」と言う見る目のない親へ 34年の指導で見つけた「才能を伸ばす3原則」

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(3)否定しない

「子どもの意見や考えを否定しない」ことは大切です。なぜなら、否定されたら、二度と自分の意見や考えを言わなくなる可能性があるからです。大人でもこの原則はすぐに理解できると思います。例えば、自分の考えを言っただけなのに、パートナーから否定されたらどうでしょうか。おそらく、「もう話さない!」となるのではないでしょうか。

筆者は私学の経営者をしていたことがあり、その間、数々の授業を視察、指導してきました。授業では先生が生徒を当てるという場面がありますが、生徒が答えて間違っていたときに、「違う!」と言って、別の生徒に当てる先生が実に多いことに驚きました。

このようなやり方をしていたら、生徒は次に当てられたときに「わかりません」と言うようになります。なぜなら否定される自分を見たくないからです。また、「〇〇さんと同じです」と周囲に合わせる解答をすることもあります。否定されても自分だけが傷つかずに済むからです。こうして自分らしさをなくしていきます。

プロの先生たちは次のように対応します。

生徒に当てて、生徒が「答えは2番です」と答えたとします。それが間違っていても、先生は「どうして2番だと思った?」と考え方を聞きます。そして次に、「1番はどうして違うと思った?」「3番は?」と聞いていきます。生徒が「何となくそう思った」と言えば、「その何となくはどの部分から感じた?」とさらに聞いていきます。思考のプロセスを明らかにしていくのです。

このように対応することで、答えた生徒は答えが違っていることに自然と気づき、正しい答えに素直に導かれていくことがあります。正解にたどりつかない場合は、生徒の考えをいったん受け入れたうえで、解答に沿った考え方を教えていきます。

3つの原則が子どもたちの芽を育てる

親子の間でも、意見や考えに対して、否定から入らないことが大切です。子どもには子どもの理屈や考え方があります。大人と違うのは、経験量とボキャブラリーぐらいです。まずはそれを大人たちが知ること、そして共感から入ることだと考えています。

以上、「子どもの才能を伸ばす3つの原則」についてお話ししてきました。

子どもは大人が思っている以上に、しっかりしています。子どもは自分が思っていること、考えていることが言語化できるレベルにまでは成長していないだけです。

これから才能の“芽”を出し、“花”を咲かせていく子どもたちを、温かくサポートしていくことができれば、そのようにして育ててもらった子はまた次の世代へと受け継いていくかもしれません。

よりよい未来を創っていくためにも、今回の3つの原則が少しでもお役に立てましたら幸いです。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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