粉飾7年、会社を潰した男「後悔はない」と言う訳 一度始めるとやめられない麻薬のようにハマった

拡大
縮小
でも、そのうち気づくようになりました。結局、どこの金融機関も、現場の支店は中小企業にお金を貸したい。支店規模にもよるでしょうが、一般的には5000万円程度までは支店長決裁で融資を決められます。彼らが気にしているのは決算書上で利益が出ているかどうかであって、それが粉飾によるものかどうかについては、あまり気にしていない印象を受けました。
決算書でいじれるところが限られて、勘定科目の現金に手をつけて水増しするようになったときのことです。「少しでも返済すれば金利を圧縮できるのに、どうしてしないのですか」と金融機関の支店担当者に聞かれたことがあります。
「迅速な経営をするためには、即座に手を打てる手元資金が潤沢に必要なのです」ととっさに答えました。担当者は何も言いませんでしたが、私の苦し紛れの説明に恐らく納得していなかったと思います。売り上げや利益の規模に対して現金が多過ぎると、誰もが思うような状態でしたから。「社長の言っていることは怪しいけれど、決算書に書かれた数字がすべてで、上司に評価してもらえる。毎月、返済してくれるのだから、まあいいか」。担当者からすると、そんなところだったと思います。
ただ、金融機関の本部は別です。私のことを強く疑っていたところもあります。本来であれば見ることができない、「融資を見送る」という稟議の回答を見る機会があったのですが、当社の決算書についての不信感が「疑わしい」などといった厳しい言葉で表現されていました。
粉飾は、「会社が一定規模まで成長したら、黒字転換できる構造になるはずだ」という期待があって続けました。しかし、その金額が1億円を超えると焦りが芽生えてきました。実際の売上高や利益に対して粉飾した金額の割合が増えたからではなく、1億円という金額の絶対的な多さにまで膨れ上がったことによる恐れです。
次ページ資金ショートで頭がいっぱい、ビジョンを忘れる
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT