粉飾7年、会社を潰した男「後悔はない」と言う訳 一度始めるとやめられない麻薬のようにハマった

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7年にわたって続けた粉飾経営は、厳しくなった資金繰りによる経営破綻で幕を閉じました。決算書を粉飾して金融機関から融資を受ける。重大なコンプライアンス違反だと分かっていますし、関係者には申し訳なく思っています。
ただ、「取り返せないレベルまで粉飾してしまった」という後悔はあっても、「粉飾しなければよかった」とは今でも思っていません。翌期以降で取り返せる程度の粉飾であれば、企業として生き残りをかけたり、成長したりするためにはやむを得ない。これが経営者としての私の本音です。
粉飾のきっかけは営業利益の赤字転落です。黒字が続くサービス業の会社でしたが、その期は売上高数億円に対して、数百万円レベルの赤字になりそうだと分かりました。当時の若い私は財務に疎く、日頃、周りの経営者仲間から「金融機関は赤字会社への融資に消極的」と聞いていたこともあって、まずいことになったと思いました。「数字をいじっても、翌期以降に黒字にして帳尻を合わせればいい。中小企業では珍しくないはずだ」。そんな軽い気持ちで粉飾したのです。
その後、私は会社を成長させましたが、最後は経営破綻しました。仮に粉飾しないで融資を受けられずに経営破綻したとすると、迎える結末は同じということになります。
でも、世の中に認知されるくらい大きく成長させるという決心で立ち上げた会社です。粉飾しない道を選んでいたら、創業者としてのエゴですが、モヤモヤした気持ちが残ったでしょう。
決算を粉飾するようになってからは、翌期の経営計画書と一緒に金融機関へ提出すれば、希望の資金を容易に調達できました。信用調査会社からの評価点は高くなり、大手企業と取引を始めるときに取引口座を開設しやすくもなりました。
ただ、心穏やかに過ごせる日はなくなりましたね。毎月、人件費や家賃のことで頭を悩ませていたのに、そこに加えて粉飾です。金融機関に知られたらどうしようと常に不安で、取引先に業績を聞かれるだけでも嫌でした。
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