東京ドームの「顔認証」実際使ってわかった不便さ 入場時は顔パスでも再入場時は紙チケにハンコ

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一方で、その脇に設けられていた顔認証サービスの専用通路はガラガラだった。事前に顔認証の手続きを済ませていた筆者は、まったく待つことなく入場口に到着して顔認証専用カメラに顔を映し、手荷物検査を済ませたうえでスムーズに東京ドームの中へと入ることができた。

東京ドームの入場口で顔認証システムを利用する客(写真:筆者撮影)

東京ドームは、今シーズン前に大規模なリニューアル工事を実施した。それに伴い、場内売店での決済を完全キャッシュレス化。そこで3月から順次導入されているのが、ドームへの入退場に加え、決済にも利用できるサービス「facethru(フェイスルー)」だ。パナソニックの顔認証システムを利用している。

もっとも、フェイスルーを利用するにはいくつか事前の準備が必要だ。まず、「GIANTS APP」をスマホにインストールして会員登録しておく必要がある。その後、アプリ画面の「顔/Suica認証」を開いて、角度を変えながら顔写真を何枚か撮影する。

こうした登録が済んだら、紙のチケットに印刷された二次元バーコードをスマホで読み込み、通路、列、番などを入力して入場登録をする。

アプリからチケットは買えるが「紙」のみ

アプリから観戦チケットを購入することもできるが、チケット自体は電子化されておらず、紙のチケットをコンビニなどで受け取る必要がある。こうして、ようやく顔認証サービスを利用して入退場できるようになる、というわけだ。

入場したのち、一度東京ドームの外に出てから再入場することも可能だが、その際には一般の入場者と同様、紙のチケットにスタンプを押してもらう必要があった。スタッフに「顔認証で入場したのだから、再入場のために紙のチケットにハンコを押す必要はあるのか」と問うたが、「ルールですから・・・・・・」と取り付く島もなかった。

顔認証決済を利用したい場合は、追加でクレジットカード情報を登録する必要もある。ただ、試合開始前に売店で顔認証を使って買い物をしようとしたところ、フェイスルーで買い物できる店を探し回ってもなかなか見つからない。案内所で聞いてみると、4月末時点で利用できるのはわずか2店舗だけだという(現時点では4店舗と巨人軍直営のグッズショップで利用可)。

そこでその2店舗のうちの1店舗に行き、顔認証での決済を試みた。ところが店員が専用のタブレット型端末の操作方法を知らず、結局顔認証ではなくSuicaを使用することとなった。もう1店舗では利用できたが、顔認証をしたうえでクレジットカードの登録時に設定したPINコードを入力する必要があった。完全なる「顔パス」とはいかないようだ。

東京ドームで顔認証システムをひととおり利用してみて抱いた率直な感想は、使い勝手がよいとはとてもいえない、というものだ。チケットと顔認証システムの連携がスムーズにできていないことがその最たる原因だろう。

現時点では、東京ドームでホームゲームを開催する北海道日本ハム戦や他のイベントでは利用できないので、東京ドームを頻繁に利用するジャイアンツファン向けのサービスといったところだろうか。

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