最新作「ストレンジャー・シングス4」‟重圧"事情 Netflixにとって「失敗が許されない作品」だ

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Netflixの公式発表によると、公開日を含む5月23日~29日の1週間集計で「ストレンジャー・シングス4」第1部は2億8700万時間視聴され、週末公開の英語版シリーズ史上過去最高の記録を更新しました。日本を含む世界93カ国でトップ10入りし、数字上も好調な出だしです。冒頭で触れたとおり、それでもなぜNetflixがまだ上を目指しているのかと言うと、今は「成功の評価が複雑化している」からです。

例えば、Disney+ではスター・ウォーズのスピンオフ作品『マンダロリアンS2』がリリースされた2020年10月30日を境に加入者を大きく増やすも、その3日後には早くも解約数が増えたことがイギリスのリサーチ会社Ampere Analysisのデータによって明らかにされました。またNetflixの『イカゲーム』の場合はソーシャルメディアの口コミによって2カ月目に火がつき、3カ月目にピークを迎えるなど、ヒットと言われる配信作品の成功パターンがさまざまにあります。

7月1日公開の第2部は4hの超大作に

予測不可能な分、できるだけリスクを軽減しながらヒットを打つことが以前より求められています。この対応策として、ヒットシリーズをより長期間で、より多様にマネタイズする手法が増えています。スター・ウォーズシリーズはその成功例です。100年以上の歴史があるスタジオはこうした可能性のある資源をより多く所有していますが、歴史の浅いNetflixは圧倒的にその数が少ないことが難点にあります。だからこそゲーム化まで進める「ストレンジャー・シングス」が40年先も稼げる作品になると確信できるまで、満足できないだろうと思うのです。

登場人物1人ひとりが主役になる描き方もキャラクター展開の広がりを見据えています。途中のシーズンから加わったロビン(マヤ・ホーク)までもが愛されるキャラクターの1人として、TikTokなどSNS上で「ミーム」と呼ばれる画像ネタがファンから多数投稿されています。何より、当初は12歳設定だったイレブンやマイク(フィン・ヴォルフハルト)、ダスティン(ゲイテン・マタラッツォ)たちが実際に成長していく姿を楽しめることがこのドラマの醍醐味にあります。

残りのエピソードは7月1日に公開予定です。たった2話で4時間近い長さもあるとのこと。常識を覆す試みがあるのも、ファンが付いていきたくなる大事な要素かもしれません。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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