これがデジタル時代のポルノ雑誌だ! アートとエロの華麗な合わせ技

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『マキシム』のケイト・ランフィア新編集長の意見も同じだ。『マキシム』はポルノ雑誌というよりは男性誌だが、以前からセクシーな女性の写真を数多く掲載している。

ランフィアは去年、ニューヨーク・タイムズ発行のファッション誌『Tマガジン』の女性ファッション記事の責任者から『マキシム』編集長に転身、多くの人を驚かせた。

「ネットではただ漠然と体の画像が流れてくるような感じだが、印刷媒体は読者にもっと思考を誘い、想像力を羽ばたかせる機会を考えてくれる」とランフィアは言う。「性的挑発とはミステリアスなものなのだ」

老舗成人誌、編集長に作家を抜擢!

『マキシム』を今後どんな雑誌にしていくか、具体的なプランを公表するのは時期尚早だとしながらも、ランフィアは「健康的な自信にあふれ、エネルギッシュな女性の姿を描いていきたい」と語る。

『プレイボーイ』も最近のリニューアルで、アートの要素を取り入れている。「今月のプレイメイト」を初めとする女性のヌード写真のページは健在ながら、60周年記念号ではスーパーモデルのケイト・モスを表紙に起用。ポップアーティストのリチャード・フィリップスとのコラボでは、テキサス州マーファにフィリップスがトレードマークのウサギをかたどったオブジェを立てた。

欧州では、フランス版『プレイボーイ』とも言うべき老舗成人誌『リュイ』が、作家フレデリック・ベグベデを編集長に迎えてリニューアルを敢行した。

最近ではパリのファッション界やカルチャーシーンの第一線で活躍する多くの作家や写真家の作品が掲載され、ジゼル・ブンチェンやレティシア・カスタといったスーパーモデルが表紙を飾った。

「目指すところは最盛期の『プレイボーイ』だ」とベグベデは言う。当時の『プレイボーイ』には、ソール・ベローやウラジミール・ナボコフ、ジョイス・キャロル・オーツといった作家たちが寄稿していた。

「非常に魅惑的で非常に高級感のあるものを掲載していく。『プレイボーイ』が絶好調だった1960~1970年代へのオマージュだ」

マンハッタンの店カーザ・マガジンは、床から天井までありとあらゆる雑誌で埋まっている。かつては売れ筋商品だった従来型の成人誌だが、近年では「ああいう雑誌を買うお客は月に5~10人くらいしかいない」と、従業員のモハメド・イムランは言う。彼が指した先にはぎゅうぎゅう詰めの棚があり、明らかに男性向けの雑誌が数冊、並んでいた。

その代わり、最近ではアダルトをはじめとする新しいタイプの成人誌を堂々と買っていくお客が増えたとイムランは言う。こうしたお客は単に裸の女性の写真が見たいだけでなく、芸術的なところも気に入って買っているのだろうと彼は言う。

「たいていは」と、新しいタイプの成人誌がたくさん並んでいるのを指してイムランは言った。「写真のクオリティで買っていく」

(執筆:Ravi Somaiya記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2015 New York Times News Service

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