文章力に自信のない人は文章を読む量が足りない たくさん読んでいけば判断能力は自ずと身につく

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ところが、そののちいろいろな音楽を聴き込んでいくと、以前は好きだったはずのその曲のことをダサく感じたりするようになったりもする。そしてその結果、「その音楽はレベルが低いよ」という指摘の意味も理解できるようになるだろう。つまりはそれこそ、“聴く耳”が養われたことの証拠だ。

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ミーハー的に惹かれた初期段階を経て、さまざまな音楽体験を重ねた結果、知識がつき、それが的確な判断能力として成熟していったということ。

文章も、まったく同じなのである。いろいろな文章を読んでいけば、最初のころはなんとなく「いいな」と思うだけで終わってしまうかもしれない。だが、読むことに慣れていくと、以前は魅力的に感じられた文章のアラが見えてくるようにもなる。それは、自分自身が成長したことの証しなのだ。

だからこそ、読む習慣を身につけることは大切なのだ。たくさん読んでいけば嫌でも判断能力は身についていくし、読んだぶんだけ自分の内部にストックができもする。そして、いつか自分が書いてみようと思ったとき、そのストックが力になるのである。

「ですます調」と「である調」

ところで、文章を書く場合には「ですます調」にするか、「である調」にするかで悩むことになるかもしれない。柔らかな印象を与えたいのであれば、適切なのは丁寧語で統一された「ですます調」ということになるだろう。逆に硬さや強さを強調したい場合は、断定形を用いた「である調」がいいかもしれない。

ただ、どちらかが絶対的に正しいというような基準があるわけではない。書き手の主観によるところが大きいわけで、私も媒体によって両者を使い分けている。「この媒体の読者には、問いかけるような『ですます調』がよさそうだな」とか、「こちらの媒体では主張をしたいから、『である調』でいこう」というように。もちろん、それだって感覚的な判断でしかないわけだが。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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