「英語論文必読」の授業に社会人学生が集まる訳 なぜ「研究論文」を読む力が、実務に役立つのか

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棚の人形はゼミの学生からのプレゼント。3Dプリンターで制作されたものだという(撮影:今井康一)
牧 兼充(まき・かねたか)/早稲田大学ビジネススクール 准教授。1978年東京都生まれ。2015年米カリフォルニア大学サンディエゴ校にて、博士(経営学)を取得。同校講師、政策研究大学院大学助教授などを経て、17年から現職。専門は、技術経営、アントレプレナーシップ、科学技術政策など。
早稲田大学ビジネススクール(WBS)の学生から高い評価を受ける授業、「科学技術とアントレプレナーシップ」。科学技術に関する「知」がいかに生み出され、それがどうイノベーション、新産業創出につながるかを考える。その学びの前提となるのが、研究論文だ。受講者は毎回アカデミックな英語論文を読まなければならない。「WBSで最も負荷が高い授業」ともいわれている。
イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学
『イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学』(牧 兼充著/東洋経済新報社/2860円/284ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──ハードな授業には米国での留学経験の影響もありますか。

自分の学んできたことを紹介したい気持ちはありました。ただ、学生から高く評価されたのは意外です。毎週6本の英語論文に触れるのは楽じゃない。しかも、データ分析の結果を示す重回帰分析の表が載った、定量研究の実証論文(定量論文)です。同僚の教員は、「そんな授業は成立しない」とも。

ところが、始めてみたら意外にうまくいった。学生は自分の担当する論文を読み込んで授業で発表しますが、立候補者が多く、発表者の枠はすぐ埋まります。イノベーションに関する研究に関心を持つ学生、論文を読めるようになりたい学生は、予想以上に多かった。

経済学者の知見が経営学に影響

──授業のエッセンスをまとめた本書は論文32本が紹介される異色の構成。経営学の本と思いきや、経済学分野の論文も多いですね。

経営学は領域の学問です。経済学、心理学、社会学が同居するようなイメージ。そして今、米国のビジネススクールには、経済学者や心理学者が増えています。なぜかというと、データドリブンの研究のほうが論文を書きやすい、つまり実績を出しやすいからです。教員としても採用されやすい。

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