三井物産、モザンビーク巨額投資の大胆不敵 果敢な資源権益への投資戦略の舞台裏

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ブラジルのVLIもヴァーレ由来の案件。鉱物資源のほか、マルチグレインの穀物輸送も担う

英断か、蛮勇か。資源市況の低迷が続く中、三井物産がアフリカ市場を本格深耕すべく、新たな資源権益の獲得に動き出した。アフリカ南東部に位置するモザンビーク。独立戦争と内戦が約30年続いた同国は、優良な石炭鉱山や天然ガスが眠るとされながらも開発が遅れてきた。

1兆円を超すプロジェクト

三井物産は2014年12月、同国のモアティーズ炭鉱の権益の14・25%をブラジルの資源大手ヴァーレから540億円で取得。「市況低迷の今が買い時」(金属資源本部・山口光太郎・石炭部長)との判断だ。炭鉱の拡張に伴い輸送能力を高めるため、モザンビークを横断する貨物鉄道と港湾インフラの事業権益の約35%も376億円で買う。

今後は発電や穀物などの周辺事業開発も進め、モザンビークの経済成長(中期8%台の見通し)を取り込む。資源・インフラを引っくるめた異例の開発案件は、炭鉱の拡張費用も含めて総投資額1100億円を超える。

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モザンビークでは石炭生産から貨物・港湾輸送まで一手に請け負う

さらに、15年3月末をメドに、米石油ガス大手アナダルコなどと共同出資する大規模LNG(液化天然ガス)計画のFID(最終投資決定)も控える。同計画は総事業規模が1兆円を超え、三井物産の「社運を懸けるプロジェクト」ともいわれる。相次いでモザンビークへの巨額投資をする背景には何があるのか。

実は、異例の一体開発案件を主導したのは、ヴァーレと密接な関係を持つ、三井物産のブラジル人材だ。「長年ヴァーレと提携してきた優位性があり」(プロジェクト本部の高木光暢氏)、競合のインドや中国の企業を押しのけ、取得したという。

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