冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?

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冷蔵庫を使うことが当たり前になった現代人は、自分が生きていくためにどれほどの食べ物が必要なのかがまったくわからなくなってしまっている。

そもそもほとんどの人は、ものを「食べきってから次を買う」体験などほぼしたことがないんじゃないだろうか? まだ大根を食べきらぬうちにネギやら人参やらピーマンやらトマトやら多種多様な食材を次々買い足していくのはごく普通の行動だ。

結果、いつだって冷蔵庫はあれやこれやの食べ物でいっぱいで、中に一体何が入っているのかを日々把握し続けることすら大事業すぎて絶対無理である。となれば、今日の献立にたまたま大根おろしを添える場合は「ああ大根があってちょうどよかった」と思うけれど、一本の大根ではたして何日生きられるのかを考える機会など決して訪れない。

なので、結局は何がどれだけ買ってあっても「もしかして足りないかも」という不安に苛まれることになる。冷蔵庫がパンパンじゃないと心配というのは、ごく一般的な現代人の感覚であろう。

人間が食べられる量は驚くほど少ないという事実

でも、大根を一本買って、それを食べてしまってから次の野菜を買うってことを一度でもやってみればわかる。心配なんぞどこにもない。大根一本じゃあさすがに……というのであれば、今冷蔵庫にあるものをまずは食べつくしてから次の買い物に行くということでも良い。

それをやりとげることがどれほど大変なことか! 人間が食べられる量など、どれほど欲張りだろうが食いしん坊だろうが驚くほどたいしたことないんである。

……ってことを知らぬままでいると、「フードロスを出さぬよう無駄なものは買わないで」といくら呼びかけられたところで、一体どこから先が無駄なのかさっぱり想像もつかないので努力したくとも努力のしようがない。だってそもそも無駄なものなんて買っているつもりなどさらさらないのだから。とりあえず冷蔵庫に入れておけばいいんだからね!

そうなのだ。この永遠の「とりあえず」を保証してくれる魔法の箱が存在する限り、「今ここ」で本当に必要なものの量などどうしてわかるだろう?

ってことで、まずは冷蔵庫とフードロスの切っても切れない深い関係がわかっていただけただろうか?

次回はさらに一歩進んで、冷蔵庫に「食べきれないもの」がどこまでもたまってしまうもう一つの強力な原動力、みんな大好きな「あるもの」についてご紹介したい。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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