日銀トップ人事、武藤氏を軸に調整本格化

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副総裁に白川氏らの名

 今回の日銀人事は経済混乱が世界的に深刻化しかねないタイミングで行われる。もはや、サブプライム問題という限定的なレベルを超えて、金融恐慌に近づいているとの見方もある。最近発生した仏有力銀行、ソシエテ・ジェネラルの巨額損失事件は、同行が母国通貨以外の資金調達の道を事実上断たれるという事態に至っている。同行はユーロ円市場で1兆円規模の調達を行っていたが、今は困難だ。この問題をめぐっては、日米欧の中央銀行同士による通貨スワップ協定など救済策が浮上する雲行きにもある。
 
 その一方、金融危機の対処方法をめぐっては、米国と欧州の政府間、さらには両中央銀行の間で軋轢が強まっているともされる。そうした状況がさらに深まれば、日本が調整役を期待される場面も訪れる。日銀トップ人事にもたついて、次期体制を築けないと、日本は世界の期待を果たせなくなる。日本自身も世界的な経済危機に振り回されそうな状況だけに、人事の遅延は内政面でも打撃だ。
 
 その意味では、総裁ポストと同様に重要なのが副総裁人事。国内外経済が不安定化する中、むしろ副総裁に誰が就くかという問題が次期体制の運営上、大きなポイントだ。「非常時で金融政策の重要性が増している折、副総裁は2人とも日銀出身者が選ばれるべきだ」(メガバンク首脳)との声が財界では少なくない。具体的には、企画担当理事などを経験した白川方明・京都大学教授や、国際担当理事を務めた平野英治・トヨタファイナンシャルサービス取締役などに期待が集まっている。
 
福井総裁は先月11日の衆院財務金融委員会で後継総裁の条件について「通貨安定への信念と鋭い国際感覚、市場を大切にして政策委員会をリードする(人物)」と発言した。これは総裁のみならず、副総裁にも求められる条件と言っていいだろう。
 
 世界が深刻な経済危機にはまり込みかねない情勢下、そうした条件を満たす新トップ陣には、就任と同時に舵取りでのフル回転が求められる。よもや、トップの人選がもたつくようなことになれば、日本の政府と立法府は危機意識の乏しさを世界に露呈することになりかねない。
(週刊東洋経済:浪川 攻 撮影:梅谷秀司)

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