競争がガキとジジイしかいない国を生んだ

平川克美×小田嶋隆「復路の哲学」対談(2)

 なぜ日本から「大人」がいなくなったのか。それは「大人」がうまく機能するための前提である制度や慣習を、今の「大人」世代がぶっ壊してきたからではないか――。
 「いま日本人が考えるべきことは、経済成長ではなく、日本人全体の<幼児化>がもたらしている問題についてではないか」。新刊『復路の哲学 されど、語るに足る人生』が話題の経営者・文筆家の平川克美さんが、コラムニスト、小田嶋隆さんと語り合う。
 ※第1回「そして日本からオトナがいなくなった
 ※第3回は1月15日(木)の掲載予定です。

 

福沢諭吉は20代で大学を作った

平川:今、大人がいなくなっているということについては、少し昔の人の写真を見るとよくわかります。20代、30代でも、昔の人って非常に大人っぽい風貌をしているんです。たとえば、夏目漱石の30代ぐらいの頃の写真を見ると、非常に落ち着いた、深みのある佇まいをしている。30代にして、ああいう顔をして、あれほどの作品を書いていたのだということに改めて驚きます。

小田嶋:福沢諭吉が慶応義塾大学の前身である蘭学塾を作ったのなんて20代ですからね。「嵐」のニノ(二宮和也)とかマツジュン(松本潤)が大学を作っちゃうようなものですよ。

今の20代、30代には、そもそもそんなことは求められていませんからね。本人はもちろん、周囲も30歳を「大人」として見ていない。「何歳になれば大人」という社会の共通認識というものが、相当大きく変化していることは間違いないでしょう。

それはおそらく、明治までさかのぼらなくても、私たちが子どもの頃と今とでも、ずいぶん変わっているのだと思います。たとえば私が子どもの頃、『少年マガジン』や『少年サンデー』といった雑誌の表紙は王選手や長嶋選手でした。彼らが小学校2、3年生の男の子の頭をなでながら、にっこりほほ笑んでいる。そういうふうに、王さんや長嶋さんを「お父さん」としてフレームに収めた図柄が、雑誌の表紙のひとつの定型だったわけです。

でも、考えてみると当時の王さんや長嶋さんって25とか26歳ですからね。いまの感覚だと“若造”です。それこそ嵐のメンバーより年下なんですから。でも、当時の彼らは周囲から「お父さん」として見られていたし、そういうふうに振る舞っていました。中身が本当に大人だったかどうかはともかくとして、少なくとも25、6歳の野球選手が、役柄として“大人”を演じていたんです。

平川:小説家や野球選手だけじゃなくて、一般の人も、昔と今とでは、まったく顔が違うんですよ。大阪の堂島の地下にバーがあって、残念ながらもう閉まっちゃったんだけど、そこのママが、何十年もお客さんの写真を撮って、アルバムにする、ということをやっていたんです。たぶん40年分ぐらいあったと思うけど、アルバム何十冊にわたって、各時代のサラリーマンの「顔」が収められているわけですね。

それを見せてもらったときに、40年前のサラリーマンたちの顔が、今よりもずっと大人だったことに驚いたんです。

小田嶋:ああ、なるほど。

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