医療現場の絶体絶命 第1章 震える日本

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感染爆発の前に日本の医療機関は機能不全に陥った。「崩壊」の足音が聞こえる。

院内感染を防ぐため、仮設テントで診療する河北総合病院(東京都杉並区)

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4月中旬、東京都文京区の呼吸器クリニックに80代の女性がやってきた。呼吸困難の症状でCT(コンピューター断層撮影)検査を行うと、明らかな肺炎の像があった。血液中の酸素レベルが低く、数値は「エベレストの山頂並み」の息苦しさを示していた。

新型コロナウイルス感染の疑いがあるため院長は保健所に連絡するが、PCR検査は断られた。感染の有無に関係なく、入院しなければ1週間以内に亡くなってしまうような重症だった。近くの大学病院に受け入れを要請したが、その答えは、「感染症専用病室に空きがないので受け入れられません」。

院長が窮余の策として取ったのは、患者自身にその大学病院に行ってもらうことだった。一度断られているので院長が再度紹介しても受け入れてもらえない。そこで、宛先を書かずに紹介状を渡し、女性が「勝手に行った」ことにしたのだ。本来は好ましくないが、一刻を争うような重度の肺炎患者が直接来てしまえば病院側も断れないだろうとの判断だった。

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