【産業天気図・建設業】国内は案件小粒化で採算低下、終始「雨」続く。中期打開策は海外か

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

建設業界の景況感は2011年9月まで終始「雨」の厳しい状況だ。建設需要は大底を打ったが、土木・建築ともに案件の小粒化が進み、主要各社の業績においては粗利率が低下する傾向にある。

リーマンショック後に落ち込んだ民間設備投資に改善の兆候がみられるなど、建設需要は少なくとも大底を打ったといえる。法人企業統計(7~9月期)は、前年同期比5.0%増の9兆5550億円。機械を中心に製造業が伸び、9四半期ぶりにプラス。アジア新興国市場の拡大で、開発生産や物流の設備を、国内で更新するニーズは着実に増えている。

10年10月の住宅着工戸数は7万1390戸で、前年同月比6.4%増。これは、分譲マンションの着工が急増していることに加えて、持ち家が同10.4%増となり牽引した。住宅建設は、中堅・中小の建設業者にとって手持ち工事を確保する重要な分野ではあるが、大手や準大手の建設業者は、積極的には入札に参加しておらず、業績への影響は少ない。

だが問題は、建設不況の長期化で、土木・建築ともに発注される案件が小粒化していることだ。たとえば大林組の今期上期(4~9月期)の単体請負金額を規模別にみると、20億円未満が46%に達した。前年同期が33%、前々期同期が29%だったので、大林の受注する案件が小粒化しているのがわかる。この傾向は鹿島でも同様だ。

大手ゼネコン幹部は、「大型案件の工事現場がある周辺で、協力業者に空いた時間を有効に使う手間仕事として小型案件を請け負うケースがあり、この比率が高まっている」としている。確かに東京都心で、大手ゼネコンが路地裏通りのような空き地で、中層ビルを建設している姿を見かける。この状況により作業効率改善の効果はあるが、長い眼でみれば建設受注単価を低く抑えているため、個別物件の粗利率低下がさらに進んでしまうジレンマを抱えている。

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