30代ロシア人2人が語る「私たちの偽らざる本音」 プーチンの言論統制の中で語ったこととは

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これはいわゆる「認知戦」(筆者注:民意を操って意思決定に影響を与えるとされていて、第6の戦場とも言われている)です。各自のスマートフォンの画面が戦場になっています。

――あなたは今、ベルリンにいます。ベルリンでもウクライナからの避難民を見たり、聞いたりしていますか。

はい。私の友だちが実際に彼らを助けています。私も彼らのことを気の毒に思っています。紛争が一刻も早く終わることを祈っています。しかし、願いに過ぎません。私たちにはそれを止める力がありません。

私は戦争についてのグループソウル(類魂)にエネルギーを費やしたくありません。その代わりに平和を祈っています。

――ロシア国営テレビのニュース番組生放送中に「戦争反対」のプラカードを掲げて拘束された女性についてはどう思いますか。

彼女はヒーローです。モスクワでは今、戦争を支持している人はそれほど多くありません。彼女は大変な勇気を持って、ライブ配信中に規則を破り、自らの行動がもたらす法的結果を覚悟していたと思います。彼女の行動は、ロシアの多くの人々の間で共感を呼んでいます。

ただ、ちょうど同じ頃にウクライナ陣営によってドネツクの民間人が殺されていたということも報道されています。彼女の行動によって、このことから人々の目がそらされてもしまいました。

ロシアの世論はSNSで変わるか

以上、ロシアの若い世代の2人の声を紹介した。今回インタビューした2人はいずれもモスクワなど都市部では反戦ムードが強いとみている。ウクライナの民間人犠牲者増加の情報がロシア国内にうまく伝われば、同国の世論もさらに相当変わる可能性がある。

プーチン大統領は厳しい言論統制をしき、そうはさせないよう強化するだろう。しかし、ソーシャルメディアを通じて戦場からリアルタイムで届けられる情報の拡散はとどまるところを知らない。プーチン政権の行く末を見るうえでも、ロシアの世論の動向に注目したいところだ。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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