野放しのクレジットカード現金化商法、中小企業にも魔の手が迫る

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規制する法律はなし 早急な整備が不可欠

もちろん、国内のカード会社もただ指をくわえて見ているわけではない。国際ブランド会社などに対して善処策を申し入れているが、今のところは空振りに終わっているのが実情だ。

その理由は明快。カードを悪用していることは明らかであるにもかかわらず、貸金業者を対象とする貸金業法にも、信販やクレジットカード会社を対象とする割賦販売法にも、現金化商法を禁止する規定はどこにもないのだ。「あえて言えば、刑法の詐欺罪などの運用でカバーできるかどうか」(法曹関係者)。

このため、海外のカード会社は「法律に抵触しないから問題ない」と主張する。国際ブランド会社のほうも、加盟店の契約に待ったをかけることはできない。結果として、国内のカード会社は泣き寝入りを余儀なくされる。

こうした状況の中、現金化業者は個人を相手とする小口の取引から、事業資金を名目にした事業主などの大口へと戦線を拡大しようとしている。限度枠の上限が高いカードや複数枚のカードを使わせれば、より大きな金額を扱うことができる。

このまま放置が続けば、ますます悪徳業者がはびこる事態へと発展しかねない。利用者のほうもいくらカネに困っているとはいっても、現金化を利用した時点でカード悪用の共犯者となってしまう。金融庁など関係官庁はこの問題について検討を始めているが、悪徳商法が社会に広がるスピードは速い。一刻も早い対策が求められている。

(浪川 攻 =週刊東洋経済2010年11月13日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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