「週4会社員」で大学院に通って彼女が得た気づき 学び直しは「企業にも大きな恩恵がある」理由

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入社後、いろんな業務に関わるなかで、ウェブサイトのデザインなどもするようになりました。エンジニアになった時と同じように、デザインも未経験で、何も知らないところから独学で始めたんですね。それで、「ちゃんとしたところで学び直したいな」と思うようになりました。

最初は美大や芸大などの大学に行くことも考えましたが、入試の難易度を考えると、社会人が簡単には入れるものではない。また、「デザインに寄りすぎて、ビジネスの要素が薄くなるのでは?」という懸念もありました。そこで、エンジニアリングやサービスデザイン、マネジメントなどを広く学べる、慶応義塾大学のシステムデザイン・マネジメント研究科(略称SDM)に入ることにしたんです。

制度面で会社がバックアップ

角田:齋藤さんは自社の開発ブログで、会社の制度を活用して、会社員として働きながら、大学院に通われたことを書かれていますよね。

齋藤:はい。でも、もともとは退社しようと思っていたんです。当時はフルタイムで働く正社員しかいなかったので、「それは無理だよな」って。当時も今も、社員数は50人ぐらいで、本当に普通の中小企業なんですよ。

角田:その人数だと、1人抜けるだけでも大きそうですもんね。

齋藤美佳(さいとう・みか)/株式会社アトラス執行役員Chief Experience Officer。2007年、東京学芸大学教育学部卒業後、同社に入社。2017年、同社に勤務しながら慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科を修了。2021年より現職(撮影:尾形文繁)

齋藤:だから、「一旦辞めて、大学院に通っている間は契約社員とかバイトで雇ってもらえたらいいな」と思っていたんですけど、大学院を探しているという話をした時に、社長から「『短時間・短日正社員制度』を作ろうと思っている」と打ち明けられたんです。学び直しに限らず、子育てや介護など、社員のさまざまな事情に合わせていくのは、会社を存続させるためにも必要なこと……と当時から考えていたようで。

角田:ではむしろ、齋藤さんのおかげで新しい制度が決まったと言えそうですね。

齋藤:そういう面もあるとは思います(笑)。そこから、週に4日だけ出社し、時短で働くようになりました。

角田:突っ込んだ質問になりますが、お給料的にはどうなりました?

齋藤:それはもちろん減りました。働いてる時間分になりましたね。でも、学び直し中は周りのサポートもあって、忙しいとは言いつつ、ほかの社会人学生よりも時間的には余裕があったかなと思います。例えば、大学院に通い始めた年になぜかマネジャー代理という、社内ではそこそこ上のポジションにつくことになったんですけど、とくにマネジャー業務についてはほかのマネジャーにかなり助けてもらいました。

角田:大学院に通い始めてからのことを伺いますが、授業のスケジュールはどんな感じでしたか?

次ページ「社会人が通える」とうたっていたものの…
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