「FRBは株価を支えてくれる」と考えてはいけない インフレ対策に追われるアメリカの「因果応報」

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昨今のアメリカ経済において、物価上昇の理由とされているのは、①コロナ禍に伴うサプライチェーン問題、②国際商品市況の上昇、そして③国内賃金の上昇という3点だ。

ちなみに、最近の日本で騒がれているのはもっぱら②であって、輸入物価の上昇が国内物価を押し上げるというコストプッシュ・インフレである。ガソリンや灯油、食品などの値上げが相次いでいるわけで、ときどき「船便の輸入遅延により、マックフライポテトが入荷できない」という①が顔をのぞかせる。③の賃金上昇などどこの国の話か、という感じだろう。「悪い物価高」などと呼ばれているのもむべなるかなである。

FRBは物価動向を読み間違った

ところがアメリカの場合は、3つの要素全部が加わっているので、コストプッシュ・インフレに加えてデマンドプル・インフレでもある。逆に労働市場はほとんど完全雇用に近いので、とにかく今は物価対策に全力投球すべし、というのが金融政策の常道となる。

思えば、変われば変わるものである。昨年夏までのジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は「物価よりも雇用重視」であった。「物価上昇は一時的(transitory)な現象」という言葉は何度も使われすぎたために、この”transitory”は『The Economist』誌が選ぶ「2021年の金融経済用語」に選ばれてしまったほどだ。今となってみれば、これはFRBが完全に物価動向を読み違えていたことの動かぬ証拠といえる。

かくして1月25~26日のFOMC(連邦公開市場委員会)では、市場予測を超える「タカ派姿勢」が示唆された。何しろインフレが到来しているというのに、金利はゼロであり、FRBのバランスシートは約9兆ドルに膨れ上がっている。利上げを3月から開始するのはほぼ確定的で、回数も年3回では済まず、4~5回はありそうな感じだ。

FRBの資産を減らすQT(Quantitative Tightening、量的引き締め)も、年央くらいから始まるもようである。利上げはともかく、QTは過去にあまり試されたことがない政策だ。市場から見たら、かなりおっかない展開といえる。

それでは、FRBの金融政策は失敗したのだろうか。

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