政界で話題「5年後の総理」番付に見る3代目の宿命 トップだったのは福田達夫氏、2位は河野太郎氏

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対照的に福田氏は、祖父・赳夫(故人)、父・康夫両氏がいずれも首相の座を射止めた3代目。ただ、父・康夫氏の官房長官時代に商社マンから秘書に転身、康夫氏の首相就任に伴い政務担当秘書官となった。その後、康夫氏の政界引退を受けて父の地盤を継ぎ、2012年衆院選で初当選したが、高齢での政界入りから、「首相を支える政治家が目標」として、首相を目指す意思がないことをアピールしてきた。

これも踏まえて福田氏は、当初から祖父・赳夫氏の秘蔵っ子だった小泉純一郎元首相の後継者の進次郎氏を「首相にしたい」と公言。このため、今回の5年後の首相候補ナンバーワンとの現場記者の評価と期待にも「そんなことはありえない」と苦笑するばかりだ。

「三度目の正直」か「二度あることは三度ある」か

そうした中、永田町では、河野、福田両氏の家系的位置づけに注目が集まっている。「河野氏は『なれない』、福田氏は『なれる』と家系的な明暗がはっきりと分かれている」(自民長老)からだ。

確かに、3代目として今回総裁選で悲願に挑んだ河野氏は、予想外の完敗を喫した。一方、福田氏の祖父・赳夫氏は故田中角栄元首相との激しい角福戦争を乗り越えて首相になったが、父・康夫氏は「なるつもりがなかった」のに党内事情で首相に担がれたのが実態だ。

福田氏も康夫氏と同じ発想とされ、だからこそ今回の結果にも「われ関せず」を装うのだ。ただ、自民党の歴代首相の就任への経過を振り返ると、「首相になれるかなれないかはある種の宿命」(首相経験者)との指摘にそれなりに説得力がある。

文藝春秋をはじめとする過去に行われた有力月刊誌などの「10年後の首相候補」「21世紀の首相候補」などは、いずれも「大はずれが多かった」(月刊誌幹部)のは事実。このため、今回の企画も「当たらないことが前提」(同)との声は多い。

ただ、昔からの格言を踏まえれば、河野氏なら「三度目の正直」、福田氏なら「二度あることは三度ある」となる。今後、両氏が「一寸先は闇」とされる政局の表舞台で存在感を発揮すればするほど、「双方が自らの背負う宿命を意識せざるをえない」(首相経験者)ことになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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