「東証プライム選択1841社」で要注目の企業は? 4月の市場再編後も生き残りを図る銘柄に妙味

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さて、前述の1月11日の発表によると、焦点だった「プライムの基準を満たさない東証1部上場617社」については、今後の行き先が分かれた。

すなわち、617社中296社は「上場維持基準の適合に向けた計画書」を開示して、経過措置の適用を受けながらプライムに上場する予定だ。計画書には、各条件を満たすまでの期間と具体的な方策を記述する必要があるため、条件を満たせなかった銘柄がどの程度プライム市場への上場申請を行ったかが注目されていた。

特に流通株式比率と流通株式時価総額の条件を満たせなかった場合は、大株主による売り出しなどが必要となる。大株主の保有比率を下げてでもプライム市場に上場したいという銘柄が多いということは、上場銘柄のガバナンス改善に対し、市場再編が強い影響力を持っていたと言えよう。今後の持ち合い解消の進捗に期待したい。

一方、残りの321社はプライムを選ばずスタンダードに移る。例えば、親会社が株式を多く保有し流通株の比率が基準を満たさない企業や、事業範囲が国内のためプライムを目指さない企業が多い。さらに、プライムの基準を満たしていてもスタンダードを選んだ東証1部企業も23社あった。

4月4日の新市場移行完了後の焦点は?

では、今後それぞれの企業の株価はどうなるだろうか。すでに、その影響は少しずつ出ているようだ。大まかに2つに分けられそうだ。

まず、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄から外れそうな企業は、インデックス型の投資信託・ETF(上場投資信託)の投資対象から除外されるため、すでに投資家から敬遠されやすくなっている。そのため生き残りのために株式の持ち合いを解消し、需給関係がさらに悪化しているケースも見られる。

一方、意欲的な中期計画を公表するなど、株主へ積極的な情報開示をして株価を必死に上げようとする企業や、グループにおける戦略の見直しで、親会社などに吸収され上場廃止する会社なども見られる。

さて、過去にも書いたが、ここで4月4日の新市場区分移行完了後の焦点を改めてまとめておこう。まず銘柄選定ルールについては、別途作成が行われる。重要なポイントは以下の3点だ。これは昨年3月時点での見通しと不変だ。

①現在の東証1部の構成銘柄は基本的にはそのままTOPIXに採用(株価への影響はニュートラル)。新たにプライム市場に上場する銘柄はTOPIXに追加される(株価への影響はプラス)。また、東証1部以外からでも「流通株式数」「流通株式時価総額」「売買代金」「流通株式比率」の4条件を満たせば、プライム市場に上場できる。現時点で可能性があるのは61社と推定されるが、年明けまでに43社はプライム以外を選択すると公表した。よって、本当に可能性のあるのは18銘柄だ。

②プライム市場では今年10月末に再度流通時価総額100億円の基準を満たしているかどうかが査定される。ここで基準未達の企業は、2023年10月末の再評価をはさみ、未達なら最終的には2025年1月末にプライム市場から「退場」となる(株価への影響はマイナス)。

③今後のTOPIXの新制度では、簡単に言えば、持ち合い株式は新たに固定株として取り扱う。これによって、上場会社間の持ち合い状況は、以前より正確に捕捉されそうだ。もし固定株が増えることを嫌って持ち合い解消が進めば、需給悪化が起こり、そうした銘柄の株価への悪影響が出ることは避けられない。

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