「ブランド=高額品」と考える日本人に欠けた視点 コロナ禍で激変した消費者の心のつかみ方

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――日本の場合、数百年以上続く老舗企業も多いですが、次の時代を担う若い経営者が伝統の中で新しいチャレンジをすることはハードルもあると思います。打開策はありますか。

大西創業100年、200年といった老舗ともなれば、伝統のもとに経営しているので、何かを変えるということが大変だということは理解できます。創業数百年というレベルでなくても、既存の枠組みを変えることは簡単ではありません。

その場合は、外部から経営を担う人材を呼び込んだり、新たに販路を開拓したりするという手があります。日本酒の酒蔵は経営が厳しいところも少なくありませんが、山口県の旭酒造の「獺祭」のように早くから海外販路を広げて成功したケースもあります。

例えば、7割は伝統を生かしたコンテンツ、3割は新しいコンテンツ、というようなポートフォリオを考えて経営するのがいいのではないでしょうか。祖業と異なる事業に挑戦する企業は増えていますし、経営者が先を見通す力がカギになると思います。

ソニーの変革の力となっている「SHINGI」

川島:私が2年ほど前から参画しているソニーの例でいえば、約200人のデザイナーが商品カテゴリーや専門領域を越えてディスカッションする「SHINGI(審議)」を頻繁に行っています。

その審議を続けてきたことが、ソニーらしい変革の力になっていると感じます。そういうことをブレずに続けることができるのが、老舗たるゆえんではないでしょうか。

一方で、若手が率いる新しい企業は柔軟に時代に即した取り組みができています。ムダを生まない受注生産制のファッションブランドもあれば、エコなパッケージを売りにした日用品ブランド、動物実験を行わず人体にも優しいエシカルな化粧品ブランドなどが次々に生まれています。

――日本のブランドビジネスのポテンシャルという観点から見て、地方の文化や産業は、生活に密着していてその土地で暮らす人たちが価値に気づいていないケースもあると思います。販路を広げるためにはどういう手段が考えられますか。

大西地域の企業をよく知る地方自治体や地方銀行がカギになると思います。例えばカバンの生産で有名な兵庫県豊岡市は、市が生産者と組み豊岡ブランドを立ち上げて成功しています。

また、近年は地域のブランディングを担うエリアプロデューサーという職も増えてきています。地方商社のような仕組みを作ることができれば販路はさらに広がるでしょう。

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