日本は「イスラム国」掃討に行きたがっている 笠井潔×白井聡、『日本劣化論』延長戦(後編)
※前編はこちら
イスラム国の掃討に日本は駆り出されるのか
笠井:集団的自衛権の問題について、もう少し具体的に考えてみましょう。イスラム国(IS)がシリア、イラクに形成されましたが、これをアメリカは有志連合で制圧するといいはじめています。日本も有志連合に入れとアメリカからいわれる可能性はあって、集団的自衛権を認めた今、拒否することはもうできません。では、どうするのか。
白井:いまISの話がでましたが、この話は僕もリアルに感じていて、多国籍軍を組みそうだという気配があります。しかし、いまのところ呼ばれていない。これは安倍首相の心情を慮れば、生徒がハイハイハイと手を挙げているのに、なんで先生は指してくれないんだろうという状態でしょう。
アメリカは、20年ぐらい集団的自衛権の解釈を変えてほしいと日本に言い続けて、ようやくそれが実現しました。そういう意味では、ついにやってくれた安倍さんはたいへんよい首相なはずなのに、歴史認識を巡る問題では軋轢が生じていて、何なのだこいつはという困惑を感じているように見えます。
でも、日本側からみれば、解釈改憲までやって軍事力を行使できるようにする政治勢力は、当然、歴史修正主義的な、昔懐かし派に決まっています。大日本帝国を全面的に肯定したいという欲望に憑りつかれたファシストであるのは自明の理です。
だから、アメリカも大変にご都合主義なのです。米軍の役に立ってほしい、でも極右はいやだ、と。そんな虫のいい話があってたまるかということなんですが、ここにきてこのご都合主義の矛盾が表面化してきています。いまのところ多国籍軍に日本を入れるという話は出てきていないわけですが、それはつまり政治的に信頼できないということです。アメリカからすれば、何のために解釈改憲をさせたのかさっぱりわからないですね。役に立たないわけです。
笠井:実際、ウクライナ情勢の緊迫で多忙をきわめていたオバマ大統領は、日本の集団的自衛権問題への対応を国務省に丸投げしたともいわれています。それに関連して、日本も徴兵制が近いという意見があります。また、現代の戦争は高度化しているので、昔のように徴兵した兵士では役に立たないという反論も。
湾岸戦争やイラク戦争などから明らかになってきたのは、アメリカが戦争に勝つのは容易だということです。空爆で敵の軍事力を破壊し、あとは機甲師団で首都を制圧すればいい。それで敵国の体制は崩壊しますが、問題はその後なんですね。少なくとも親米政権が安定するまで、アメリカ軍は撤退できません。占領した旧敵国を統治しなければならないから。