休日連絡NG、つながらない権利どこまで主張可能? 時間外に残業代なしの電話・メール対応はダメ

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ですから、筆者が経営者や人事労務責任者の立場の方にお伝えしたいのは、たとえ「お願い」ベースであったとしても、「つながらない権利」を保証しなければ、自社の従業員には少なからずの心身の負担を強いていることを認識していただきたいということです。

とはいえ、実務上は、各社の事情はさまざまあり、従業員に対し、時間外の電話やメール対応を完全に免除することは難しい場合も少なくはないと思います。

そのような場合であっても、無制限に時間外の電話やメール対応を求めるのではなく、「真に緊急性が高い事象をリストアップし、それ以外の場合は業務時間外の社内連絡は禁止する」「顧客に対して自社の営業時間を明確にアナウンスする」などの対応を取り、できる限り自社の従業員の「つながらない権利」を守ることが会社として望ましい対応です。

意識的に公私の切り分けを

従業員の立場の方も、「つながらない権利」を確保するために、各々で工夫できることはあります。

業務時間内の生産性や仕事の精度を上げたり、スケジュールに余裕を持って計画的に仕事を進めれば、顧客や上司から業務時間外に緊急連絡を受ける可能性を減らすことができるでしょう。また、顧客には個人用のスマートフォンの電話番号やメールアドレスを教えないなど、意識的に公私の切り分けを行うことも重要です。

また、自分の同僚にも、是非、目を向けていただきたいと思います。

自分が良かれと思って「つながらない権利」を犠牲にして、顧客に対し、24時間365日の対応をした場合、顧客はもちろん喜ぶと思います。しかし、担当者が変更になった場合、「サービスの質が落ちた」とか「御社のサービスの質には一貫性が無い」などと顧客から言われ、後任者が苦しむことになります。

ですから、同僚や会社全体のことを考えるならば、個人的なスタンドプレーで過剰サービスを行うのは望ましいことではありません。この点は、会社側としても「緊急時を除き、営業時間外に顧客へ連絡をしてはならない」などの基準を定めるべきでしょう。

このように、「つながらない権利」は働く人にとって非常に重要なものです。

「つながらない権利」が尊重される職場環境に恵まれることが最も望ましいことです。しかし、「つながらない権利」は会社から与えられるのを待つだけでなく、自らの努力や工夫によって確保する、という側面もあることも念頭に置いていただければと思います。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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