内訟録 細川護熙総理大臣日記 細川護熙著/伊集院敦構成 ~痛感させられる歴史に学ぶ重要性

内訟録 細川護熙総理大臣日記 細川護熙著/伊集院敦構成 ~痛感させられる歴史に学ぶ重要性

評者 塩田 潮 ノンフィクション作家

 参院選で大敗し、民主党政権は16年前の非自民政権と似た軌跡をたどり始めた。だが、昨年の夏以後、当時の鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長は、ともに「16年前の失敗」を胸に刻み、二の舞い阻止に腐心してきた。とくに細川護熙内閣で官房副長官だった鳩山氏は「細川首相の8カ月の壁」を強く意識した。

結局、同じく8カ月で退陣となったが、辞意表明の数日前、細川氏の在任8カ月の「総理大臣日記」が公刊された。構成者の伊集院敦氏は「あとがき」で「そろそろ公開しようかと思っている」と聞かされたのは昨年の夏、と明かしている。

日記だから、日々の出来事や心境、所見などが中心だが、博学多才の細川氏の含蓄と示唆に富む記述に加え、各章ごとの構成者の「解説」、多くの関係者の証言、在任時の首相の動静、最近の本人のインタビューも収録する。細川政治の全体像と細部のリアルな動きの両方を知ることができる構成である。

読み進むと、当時のコメ開放と16年後の普天間問題、国民福祉税騒動と菅直人首相の消費税増税などが二重映しとなる。歴史に学ぶことが政治指導者の選択と決断にとっていかに重要かを痛感させられる。

一点だけ、政治家の日記は歴史の真実を伝えているかという問題がある。将来の公開を意識した記録者の執筆意図を裏読みする人もいる。だが、虚心、冷静な姿勢、克明な記録という点から、第一級の歴史的資料と位置付けられるのではないか。

今も残る最大の疑問は、なぜ8カ月で辞任したかだ。本人は「権力にしがみつこうという性を持った人たちにいくら説明したっ
て、どうせわからない」と語っているが、これを細川氏の流儀、美学と見るか、ここが政治指導者としての限界なのかは評価が割れるところだろう。

ほそかわ・もりひろ
1938年生まれ。上智大学法学部卒業。朝日新聞記者を経て、83年熊本県知事。92年5月、日本新党を旗揚げし代表就任。93年7月~98年5月衆議院議員。この間、93年8月~94年4月、第79代内閣総理大臣。

日本経済新聞出版社 2625円 533ページ

  

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